宇宙編
月決戦編
第33話 宇宙の念
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「もう、いいでしょう…?」
四肢を失い、既に漂うだけとなったレギーナを見て、薄い涙を瞳に浮かべるアイラ。
「わかった…人は分かり合えるってことが…強化人間とか、立場とか関係ない、人は通じ合うことができる!私が今、あなたを感じてわかったように!」
戦闘中、思いをぶつけ合うことで、二人の心は重なり理解した。
しかし、理解したところで、何も変わらない。
「だ…から…何…?わ…た…ゲホッ…私は、守らなきゃ…いけない…」
とめどなく流れる血液が、ひんやりとした体を包んでいく。
バイザーは割れ、破片は深紅に染まっている。
相手を理解したのはアイラだけではなく、ナナも同じだった。心地よく、シンクロした意識。
しかし、その心地よさと、自身の立場を重んじる強化人間故の冷たい本能が、後の惨劇を生む。
「私たちは敵同士…私の…義務は…」
「投降してよ??これ以上…人の争いを…増やしたくない…戦いたくなんかないよ??」
ダメダ
テキニツカマルナ
ヒミツヲシャベルナ
「投降…する…なん…て」
イケナイ
メイレイハゼッタイ
「くっ…あ…たま…が…」
流血のせいではなく、何度も響く研究所での教えが、頭を締め付ける。
こんな状況、こんな状態なのに、ふとオーガスタ研究所での“あの日“を思い出した。
晴れ渡る空、白い雲。
「どうしたのナナ?」
青紫のしなやかな髪。
私より頭一つ分程高い身長。
「ああ、ロザミィ。あの空の向こうには、宇宙があるんだよね。それでコロニーには多くの人々が住んでる。不思議だなぁって」
彼女の名はロザミア、みんなからはロザミィと呼ばれている。私がこの研究所に来る前からここにいる。
「不思議ね、同じ人間なのに、こんなにも離れたところで暮らしている…」
彼女は思いつめた目で空を見上げた。
「けどねナナ。宇宙はいい人達ばかりではないの。地球を支配しようと企むスペースノイドも沢山いるわ」
「…どうして、仲良く生きていけないのかな…?」
「難しいわね…人が生きていくには、どうしても争いは起きてしまうものよ…」
暗い目をした彼女が、目線を落とす。
「そんな…」
ナナはまだ知らなかった。
自分は人を殺めるために作られた意思をもつ殺人マシンだと。
「けどね、関係ない人達や弱い人達を守ることが、私たちの役目なのよ」
「難しい…わかんないや」
「今はいいの、それで。いずれナナにもできるわ、大切な人が」
「ロザミィは大切な人だよ!」
「あら、ありがとう。私もよナナ、午後の訓練も頑張りましょう?」
「うん!」
そんな思い出…ロザミィは最期、こんな気持ちだったのかもしれない。
「んん…はぁ…」
血まみれの体をゆっくり起こし、ヘルメットを投げ捨てる。
「はぁ……はあ…ぐ…ぁぁ……んんぁ…」
全身が凍て
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