16話 卵
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
・・・・
ようやく船旅が終わり、船を降りようとしたところで僕はゼシカさんに呼び止められた。凛とした彼女は決意を決めたように僕らに近寄ってくる。ちょっと眉を釣り上げた彼女が怖い。だけど隣のトウカは訳知り顔で微笑んでいた。
「あたし、リーザスの塔ではあんたたちに間違って攻撃しちゃったこと、謝りに来たの」
「え」
「……?」
あのことを謝りに?……ちょっと僕、あまりの迫力に後退りしちゃったんだけど、それは悪かったな……。
「トウカには謝ったけど……あんたたちにはまだだったから」
「……」
「早とちりして、さーせんっした!」
「えっ」
「えっ」
えっ、なんで先に謝ってもらってたはずのトウカも驚いているの?こうじゃなかったの?彼女らしい……男気あふれる……いっそ清々しい……。僕、結構混乱してるな……。
「お、おう……勇ましい謝罪なこって」
「トウカへのは……トウカがあまりにも兄さんに似てたから照れちゃって……我ながらあたしらしい謝罪じゃなかったわ」
「お、おう?」
「似てたんだ……」
「ええ、その態度がね」
態度が。なるほど……。トウカみたいなお兄さんってことはそれは紳士だったんだろう。女の人にトウカは実に紳士だから。あの、イケメン風なトウカがゼシカさんのお兄さんに似ている……。なんてことだ。これ以上は言わない。考えないでおく。……イケメン、か。
「それでね、あたし、考えたんだけど……あんたたちとあたしは目的が一緒でしょ?ドルマゲスを倒すってところ」
「そうだね……」
「だから、あたし……出来ればあんたたちと一緒に旅がしたいの」
「お……そうきたか」
なにが「そうきたか」だよ、トウカ。何をゼシカさんに吹き込んだんだ。確かに、女性ひとり旅なんて考えるだけで危険そうだけど……僕らのしている旅も到底安全なものじゃない。普通に考えて……断ったほうが……いや、彼女なら断ったら一人で旅をしかねない。むしろそうされたほうが気が気じゃないだろうな……。これは受けるしか無いのかな……?
「ええ、あたし……トウカに力を過信してはいけないと言われたわ。確かにあたし一人じゃ、あんなに強かった兄さんを殺したドルマゲスを倒すことは出来ないと思うの」
「だから……仲間に?」
「そうよ。これでもあたしは魔法使いの卵。メラは……見たわよね?他にも魔法は使えるし、武器をとって戦うことも出来るわ。足手まといにはならないつもりよ」
「……。トウカ」
「いいと思うよ」
結局僕は名ばかりのリーダーって訳だ。最終的になるようにはならなくて、トウカに聞く。勿論僕も、理性では分かっているつもりだ。だけど、肯定してほしいことだってあるよね?トウカはまさにそんな存在だ。予想通り、間髪入れずに返事が帰ってきた。も
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ