0話 覚醒
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音を吐く日本の女子学生の私はもう、殺した。
あんなに私の頭のなかで泣き叫び、合理主義でありながらも逃げようとする役立たずはいらない。私はもう遠藤桃華ではないからだ。トウカ=モノトリア、それが私の名前。モノトリア家という大貴族の長子にして未来の当主、それが私だ。今の私に必要な物は強い精神力に強い肉体、理性的な考えだ。女らしさも平和ぼけした考えも皆捨て去る。
「トウカ様、当主様がお呼びで御座います」
「父上が?分かった」
手始めに私は髪を短く保つように心がけた。より男と思わせるために。どうしても憧れてしまいそうになる長い髪は、大人になってからでいい。大人であれば長い髪でも、長髪の父上を真似したのだと言えば済むから。
女らしさはたったの十八年、我慢すればいい。その十八年はもう五年も過ぎたのだから。十八歳になれば私は当主を継ぐ。それにモノトリア当主の命を狙うものは早々居ない。どれだけ当主が強いのかは世界に噂が轟くほどだから。モノトリアは武を重んじる貴族だ。そこらの戦士には引けを取るはずがない。
誇り高きモノトリア家の存在意義はトロデーン王国の王家を守護するというものと血を絶やさないというもの。故に強いのだ。ある者は剣と魔法の使い手、ある者は大魔術師として名高く、ある者は接近術に特化していたという。……最初は魔法が存在することに驚いたっけ。
血筋に関しては……血の有無がわかるという摩訶不思議な道具で私にモノトリアの血が流れていることを突き止めたため問題ない。モノトリア家は昔は多産で何人かは地位を捨てて平民になっている為、時折私のような者を受け入れる。……モノトリアは現在、血を引くものは私を入れてたったの六人で内三人は縁切りされていたりしているから頭数に入れない。ここまで減っていて、義母上が病弱で、子供を生むのが困難であるならば私を養子にしたのは納得できる。
私は男らしくあるために剣を習う。剣は騎士の嗜みだから。私の身を守ってくれるから。姫様や陛下を守れるから。そのためにはどんな努力もしよう。「トロデーン王家」を守るために私は生きているから。感謝の心を示すために。
私をよく理解してくれ、民には慈悲深い父上の期待を裏切らないように。優しく、清き心をもつ母上が、ルゼルという息子を失った悲しみを忘れるように。
私は、今日も生きよう。自分なんていらないんだ。小さなトウカ、泣き虫で、臆病で、一人が嫌いで、嫌われることが何より嫌いなトウカは要らない。
・・・・
「ただ今参りました、義父上」
「トウカ、今日は堅苦しい場ではないんだよ?」
「はい、……父さん」
「それでいい」
少年のように悪戯っぽく笑った義父上は頭がくらくらするぐらいわしゃわしゃと私の頭を撫でた。すかさず義母
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