第九話 召集
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レポーテーションを使うにしても、全体像がイメージできなければ
対象を欠片ひとつ残さず飛ばすことなどできない。
それに、膨大なエネルギーを要するため
そう何度も、能力を繰り出すことはできない。
とは言え、ぐずくずしてもいられない。
もし間に合わなければ、地球上の生命も文明も滅んでしまう。
地下に逃れた我々も無事というわけにはいくまい。
休憩時間になり、百香は研究員や能力者たちに着いて
エレベーターに乗り、最下層の食堂へ下りた。
楠田と同じテーブルで食事をしていると、
武井が知らない男を連れてやって来た。
「同席していいですか?」
「もちろん、どうぞ。」
武井は楠田の隣、男は百香の隣りに座り、料理が乗ったトレーをテーブルに置いた。
「圷さん、この人です。紹介しようと思ってたのは。
この人は日系アメリカ人で、我々と同じテレポーテーションを使います。」
口ひげを生やしたその男がにっこり笑った。
「ハーイ、キャシーです。よろしく。」
え? キャシーって… うそ… この人男性よね。
しかし醸し出す空気でそうとわかると
百香は好奇の目で彼の所作を目で追った。
タンクトップから突き出た腕は百香の太ももほどもある。
胸筋も分厚くて、ボディビルで鍛えているようなマッチョな体をしている。
しかし、その所作は実にエレガントというか、なんというか…。
よく見ると、まつげも長い。その視線を追うと…、
(おやおや、博士にロックオンですか…。ってか、やめてよねぇー!!)
楠田に向けられたキャシーの視線を
妄想バサミでぶちっと荒っぽく断ち切った。
その頃、北極の上空では不気味な光景が広がっていた。
それは突然始まった。
6本の巨大な光の柱が天に向かって音もなく出現したのだ。
その光の柱は正6角形を作ると反時計まわりにゆっくり回転し始め
光のチューブを作り始めた。
回転は徐々に速度を増し、その遠心力で輪の半径が外へと広がってゆく。
やがて広がりが治まり、輪の中心あたりに灰色の雲が湧き上がる。
すると今度は、光の輪がその雲を目掛けて次々と放電し始めたのだ。
そして、雲を突き抜けて現れたのは、まさしく巨大な円盤であった。
機体から放たれる眩い光が、辺りの風景までをも真っ白に飲み込んでいる。
見ようによっては、太陽がもう一つ浮かんでいるようにも見える。
円盤は回転しながら強烈な熱を帯び、ジグザグに下降をし始めた。
上空100メートル付近で一旦止まると、
今度はジグザグに上昇し、元の位置に戻った。
閃光が走ったかと思うと、円盤を囲むように虹色のカーテンが現れた。
オーロラである。北極上空にオーロラが現れたのだ。
ということは、地球の磁場が復活し
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