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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十話 美しい夢
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ミュッケンベルガーに強い影響力を持つ者達に注意を向けなければならん。その一人がヴァレンシュタイン中将だ。

「しかし、そうなるとブラウンシュバイク公は兵を起しましょうか?」
不審そうな表情でボルテックが尋ねてくる。
「ブラウンシュバイク公も勝てぬということには気付いただろうな。自分で指揮したのだ、いやでも判っただろう」
「となると動かないのではありませんか?」
「それはわからん。本人が反対でも周りに担がれ否応無く動かされる事はあろう」

「否応無く、ですか」
まだ、ボルテックは判っていないようだ。
「反対すれば殺されるとなればどうだ?」
「殺される……しかしそれでは」
「後は娘のエリザベートを担げばよい、そう考える者も出よう」
「!」
絶句するボルテックを見て俺は満足した。これが刺激のある会話だ。

「ブラウンシュバイク公が生き延びるためにはどうすれば良いのでしょう?」
気を取り直したボルテックが尋ねてくる。
「そうだな。もし私なら、エリザベートを結婚させる」
「有力者とですか? それで基盤を強めようと。しかし上手くいきましょうか?」
ボルテックは不審そうな顔をしている。俺は内心おかしかったが笑ってはまずかろう。

「補佐官の言うのが貴族の有力者というなら違う。実力者とだ」
「?」
「ヴァレンシュタイン中将だ、彼をブラウンシュバイク家に婿として入れる」
「ヴァレンシュタイン中将? しかし彼は平民ですが」
呆れたような声を出しているな、ボルテック。しかしブラウンシュバイク公は滅亡の瀬戸際にいるのだ、非常の時は非常の策が要る。

「言ったはずだぞ、実力者だと。その上でブラウンシュバイク公は隠居し、ヴァレンシュタイン中将に家督を譲る」
「……しかし、それではエリザベートは女帝には」
「平民を夫にしたのだ。当然皇位継承争いからは降りる事になるだろうな」
ボルテックは混乱している。ま、当然だろうな、ボルテックは能力はあるが常識人だ。だからこそ補佐官として置く価値が有る。周りがどう考えるかの目安になる。

「ですが、それでは」
「当然、周囲の反発は有るだろうな。しかしメリットも大きい……フフフ、まだわからんか?」
「???」
いかんな。どうにも楽しくなってきた。笑いが止まらん。

「ブラウンシュバイク公爵家の当主となったのだ。軍の階級もそれに応じて上がろう。まず、上級大将といったところか」
「!」
まだ驚くのは早いぞ、ボルテック。
「ヴァレンシュタイン中将からブラウンシュバイク上級大将となれば、役職もそれなりのものとなろう。宇宙艦隊副司令長官とかな」
「!」

「おかしな話では有るまい。ミュッケンベルガーが出兵した後は、事実上彼が宇宙艦隊をまとめていたようなものではないか。実と名が一
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