第七話 姉としての責任その二
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「学校の先生には注意してね」
「暴力振るう人が多いんだね」
「男の人だけじゃないから」
「女の人もなんだね」
「そうした人もいるわ、私も暴力は嫌いだから」
「それを振るわない人かどうか」
「それが大事なのよ」
まさにというのだ。
「だから優花もよ」
「男の子か女の子じゃなくて」
「人としてどうあるか」
「そのことがだね」
「大事なのよ、覚えておいてね」
「わかったよ」
微笑んでだった、そのうえで。
優花は優子にだ、鍋の中の葱を自分の椀に入れつつ言った。
「人としてどうあるかが大事で」
「性別のことはあってもね」
「そのことにこだわってはいけないんだね」
「そうよ」
その通りという返事だった。
「よく覚えておいてね」
「それじゃあね」
「あとね」
「あと?」
「最後はどうするの?」
話題を変えてきたのだった、ここで。
「お鍋の」
「おうどんか雑炊か」
「どっちにするの?」
「どっちもあるよ」
うどんの麺も雑炊に使う御飯もというのだ。
「だからどっちも出来るけれど」
「そうなのね」
「姉さんはどっちがいいの?」
「そう言われると困るわね」
眉を曇らせてだ、優子は答えた。
「難しい選択ね」
「そうだよね、どっちも捨て難いよね」
うどんにしても雑炊にしてもというのだ。
「本当に」
「どうしたものかしら」
不意に女の子の言葉を出した優花だった、今度も無意識のうちに。
「ここは」
「そうね、コインで決める?」
「コインで?」
「コイントスでね」
懐から十円玉を出してだ、優子は弟に言った。
「それでいこうかしら」
「それはあまりね」
「よくないかしら」
「御飯食べてるじゃない」
だからと返した優花だった。
「コイン投げてお鍋の中に入ったら」
「駄目っていうのね」
「あまりよくないよ」
「お金は色々な人が触るからね」
「案外雑菌とか多いっていうけれど」
「そうよ」
その通りとだ、優子も答えた。
「人の手から手に渡ってるからね」
「だからね」
「ここでコイントスをして」
「それでお鍋の中に入ったらよくないかっら」
「だからなのね」
「うん、そういうのでは決めないで」
「じゃあ別の方法で決めるべきね」
優子も納得した声になっていた。
「それ以外で」
「うん、ちなみに御飯を使ったらね」
雑炊にだ、言うまでもなく。
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