第41話
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普段は見せない表情に二枚看板の二人が驚く。
「暴政など無かったと言うのに、妙な話だ」
『!?』
袁紹の言葉に彼を除いた全員が目を見開いた。その中には斗詩達も含まれている。
それもそのはず、暴政の有無はまだ明らかになっていないのだから。しかし袁紹は確信している。
「な、何を申すかと思えば……儂は洛陽の民として事実を――」
「では説明してもらおうか、何故今も戦が続いているのか」
「……儂は軍には疎いので――」
「では説明してやろう!」
遮る物言いに商人がたじろぐ、それでも笑顔は崩さない。
「虎牢関を抜かれた時点で大局は決した。張遼軍は側面から現れた孫策軍、そして曹操軍の二軍を相手に戦い。華雄軍は我が軍を、さらに後続の連合を相手取っている。このまま戦えば戦力差の前に全滅するのがオチだ。しかし降伏する様子は見せず、今も尚連合に喰らい付いている。……何故だ?」
「卑劣な董卓めに家族の命をにぎ――」
「否、それをする余裕など、今の董卓軍には無い」
「将に脅され――」
「否、それではこれまでの士気に説明がつかぬ。大体、脅しているならとっくに背を刺されている」
「ッ……降伏しても死罪されるとして命欲しさ――」
「否、戦い続ければ確実に全滅する。命が惜しいのであれば降伏に希望を託すのが道理」
「――ッ……ぐ」
「薄ら笑いはどうした? まぁ良い。ここまで説明すれば殆どの者が矛盾に気が付いただろう」
「今も戦い続ける理由ですね」
斗詩の補足に満足げに頷く。
「そうだ、これは暴虐の徒に出来る事では無い。民に愛され、将兵に好かれる徳人の成せる業だ」
『!?』
「――ッ」
皆が袁紹の言葉に驚く中、彼の背後からすすり泣く声が聞こえてきた。
董卓だ。思えば彼女の理解者は外部には居なかった。生き延びた所で汚名を着せられ、自分の為に戦った者達は大陸中から非難される。
しかし彼が――袁紹が現れた。董卓の無実を理解し、兵士達の想いを解ってくれた。
それが董卓にとってどれほど救いとなるか。例え此処で散ったとしても、彼が皆の誇りを守ってくれる。
絶望的な出来事が続いただけに、この小さな救いには涙を流さずにはいられない。
「ははは! いやはや恐ろしい、そして意地が悪い。全てを理解した上で問いかけましたな?」
「小悪党如きが大儀を語るからだ」
「小悪党……ですか、手厳しいですな」
「大方、長話で仕損じたのだろう? 絵に描いたような小悪党ではないか」
「はは、図星で御座います。ですが――長話が過ぎたのは儂だけではありません」
商人の言葉と同時に、兵士が何かを耳打ちする。
「あの問
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