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恋姫†袁紹♂伝
第41話
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!』

『おおそれは名案! 行くぞ斗詩、全速前進DA!!』

 悪ノリ二人組みにより、半ば強制的に担ぎ手の一人にされてしまった。
 どうせ止められないのなら――と、護衛を兼任する為に付いて来たのだが。

「……シクシク」

 何か大切な物を失った気がするのだ。
 


 いち早く意識を取り戻したのは又もや商人の男。目の前の事態に困惑しながらも、聞き捨てなら無い言葉を言及すべく口を開く。

「顔良に文醜……あ、あなた方が袁紹様の手の者だとでも言うのですか!?」

「本人だ」

「……一応お聞きしますが、どなたがですかな?」

「我が」

『…………』

 再び両者の間に風が吹く、その音色は袁紹達以外の心情を表していた。
 その場の誰もが現実逃避しかけたが、疑問をぶつけた男は何とか踏み止まる。大役を前に思考停止などしていられない。

「我が身意外に証拠が無い故、信じるかどうかはお主等次第だ」

「……いえ、信じましょう。貴方様の纏う尋常ならざる気配の説明が、それでつきます」

 頭では理解できませんが、と小さく締め括る。
 
 彼の言葉に袁紹は感心した様子で目を細めた。常人であれば到底信じられないだろう、その証拠に眼前の兵士達はうろたえている。
 対してこの男は笑顔の仮面を貼り付け、心が読まれないよう用心している。
 悪人だが、無能では無いようだ。

「して、その袁紹様がこのような所に何用で?」

「洛陽に向かう途中、遠目で離脱するこの馬車を見かけてな。追って来てここに行き着いた訳だ」

「……それで、どうして我が兵を吹き飛ばしたので?」

「知れたこと、いたいけな少女を悪漢から守っただけよ」

「これはしたり! 我等は悪逆董卓を討つべく、かの者を義を持って討ち果たす所だったのですぞ!!」

 でたらめよ! ――と叫びそうになった賈駆を、袁紹が後ろ手で制す。
 『この場は任せよ』とでも言うのだろうか、賈駆は口を閉じる。その事に驚いたのは当人だ、賈駆は物事を疑って吟味するクセがある。その彼女をして、何がここまで自身を素直にさせるのだろうか。
 考えるまでも無い、袁紹だ。
 威風堂々とした佇まい、纏う暖かな空気、下種の視線を遮る大きな背中。
 全てが自分たちに、言いようの無い安心感をもたらしてくれる――震えすら忘れる程に。

「義は自分達にあると申すか、では謝罪せねばなるまい――が、その前に質問して良いか?」

「何なりと」

「軍属には見えぬ、どの手の者だ?」

「勢力には属しておりません、手前の方で勝手に行動した次第です」

「洛陽の暴政を憂う、一人の民としてか?」

 はい――と、力強く頷く。それを見て袁紹は笑う、意地悪な笑みだ。

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