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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十九話 来訪者(その3)
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ラウンシュバイク公の背後を見た。誰も動じていない。既に彼らは知っているのか。思わず私は周りを見た。ラインハルト様もミッターマイヤー、ロイエンタール少将も驚いている。
「お前には貴族の義務が判るまい?」
静かな、悲しげな声だった。
「貴族の義務?」
「そうだ、判るか?」
「……」
「貴族の義務とは皇室を守る事だ」
「そんな事は」
「判っておらぬ!」
ブラウンシュバイク公の怒声が響いた。
「判っておらぬのだ、フレーゲル。判っておるのならこうも陛下に対し不忠を働くはずが無い」
ブラウンシュバイク公の声が一転して悲痛さを帯びている。本気で殺すのか。
「伯父上?」
「お前は先日の爆弾騒ぎでは陛下を見捨てて逃げようとした。そして此度はミッターマイヤー少将を殺そうとした」
「しかし、あの男はコルプト大尉を……」
「ミッターマイヤー少将は軍規を正したに過ぎぬ。陛下のご命令に従っただけだ」
ブラウンシュバイク公の声がさらに悲痛さを帯びる。
「……」
「お前は短期間の間に二度も陛下に対して不忠を働いた。わしはお前の育て方を間違えたようだ。責任は果たさねば成るまい」
疲れたような声だ。
「お、伯父上、お許しください」
「フレーゲル、ヴァルハラでわしを待て」
ブラウンシュバイク公がブラスターを抜こうとする。
「お、伯父上!」
「閣下、お待ちください」
「ヴァレンシュタイン、邪魔をするな」
ヴァレンシュタイン中将がブラウンシュバイク公を止める。何をするつもりだろう。
フレーゲル男爵の命乞いか。
「小官が処断します」
「なにを言っている」
「小官はアンスバッハ准将では有りません、元々閣下の敵です。憎まれても構いません」
「……」
「フレーゲル男爵、死んでください」
ヴァレンシュタイン中将がブラスターを構える。
「ま、待て、お、伯父上、助けてください」
フレーゲル男爵が助けを求める中、ブラスターから白線が放出された。白線はフレーゲル男爵を包み、男爵は痙攣すると崩れ落ちた。
ヴァレンシュタイン中将はゆっくりとフレーゲル男爵に近づくとしゃがみこんで首筋に手を当てた。脈を計っているのだろう。
「フレーゲル男爵は亡くなられました。外傷がありません、おそらくは心臓発作でしょう」
「?」
「何を言っているのだ、ヴァレンシュタイン」
ブラウンシュバイク公が問うのももっともだ。フレーゲル男爵は死んではいない。中将はブラスターの光線を拡散させた。あれは捕獲用に銃口を切り替えている、殺傷力は無い。
「フレーゲル男爵は亡くなられました。小官が確認したのは皆さんも見たはずです」
「……」
「死んだのです」
ヴァレンシュタイン中将は静かに周囲を見回した。普段柔らかな表情を浮かべる
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