第3章 リーザス陥落
第85話 決戦・ヘルマン第3軍
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のだな」
ここまで言った所で、もうハンティは我慢できなかった。
「だから、トーマ……! あんたが死ぬわけにはいかないだろう。……これは、明確じゃない。相手側に関して、あたしに心当たりがある。だから、あたしが……!」
そこまで言った所で、トーマの手が。ハンティの頭よりも遥かに大きな手のひらを向けられた。
「ハンティ。……それは、皇子の命か?」
「ッ………え………?」
ハンティには、何を言っているのかが判らなかった。
トーマは静かに、そして 何処か重みのある言葉を繋げる。
「お前に、儂を拾い上げて来いと……、そう、皇子がお命じになったのか」
「……………」
重みのある言葉、問い。
それには、鋼の様な意志を感じた。そして、一端を察し、ハンティは力なく、首を振る。
「ならば、動けぬ。それでは意味がない」
「そんなの、気にしている場合!? 命令の系統だの、なんだの……! 今はそんな事を言っている場合じゃ……「違う」ッ……」
それは一番の重みのある遮り、だった。
「皇子の眼を覚ます為だ。……ご自身で、何を起こしたのか。そして、どうなったのか、……その全てを。その背に負ってもらわなければ意味はない」
きっぱりと、この歴戦の猛将、黒騎士は言い放った。
「パットンの……眼を……?」
ハンティは、そこでパットンの姿を思い描く。
今のパットン。それは、無能で傲慢、更には小心者、愚鈍、癇癪持ち。……上げればきりが無い。
それが、近年の皇子への評価だった。
現在、皇子であり、第3軍を率いている立場にはなっているものの、誰ひとりも、心から従っていない。いや、3軍に限った話ではないだろう。国に戻ったとしても、従う者など、片手で数えられる程度しかいないだろう。
だが、目の前の男。この最強の黒騎士を除いては。
「……ヘルマン本国は、未曾有の苦境にある。貪官汚吏どもがよって集って、ヘルマンを、古い国を食い物にしようとしておる。シーラ殿下は、個人としては善良だが、周りにいる者共の人形となる運命。……今のままではそれは変えられぬだろう。その玉座につけば、多くのものが不幸になるだろう」
「………」
トーマは、己の相棒であり、苦難を共にしてきた戦鎚《グラ・ニュゲト》の取手を握り締め、続けた。
「未来を拓かねばならん。皇子が玉座に就く形でなくとも良い。……ヘルマンをよりよく導けるものが必要だ」
「トーマ……」
ハンティの眉が僅かにあがった。
――無理だ。パットンには……。
その言葉が喉から出かかっていた。
嘗て戦い、そして 奇妙な縁となった男にも言われた。
『身内の事も注意しておいた方が良い』
確かに
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