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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十八話 来訪者(その2)
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チガイ犬より強い人間を頼るか、あるいはキチガイ犬の飼い主に頼むか、交渉のカードは多いほうがいいだろうと言っていました」
■帝国暦486年7月5日 帝都オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「こんな遅くに何の用だ」
ブラウンシュバイク公爵邸の応接室はリッテンハイム侯の応接室と比べても何の遜色も認められなかった。お互い張り合ってるんだろう。
ブラウンシュバイク公は不機嫌そうな声を出した。応接室には俺と公の他、シュトライト准将、アンスバッハ准将、フェルナー中佐がいる。座っているのは俺と公爵だけだ。
「ミッターマイヤー少将をどうなさるおつもりです?」
「なんの話だ?」
「彼を事故で殺すつもりですか?」
「何を馬鹿なことを言っている」
公爵は呆れたような声を出す。いや、声だけじゃない、表情もだ。
「? しかし彼を監禁しているのではありませんか?」
「確かに彼を監禁した。しかし殺しなどせん」
「?」
怒っているようだ。何か変だな。
「正直に言おう。確かにわしは腹を立てた。いや今でも怒っている。コルプト大尉をわしの一族と知りながら射殺したのだからな。最初はミッターマイヤー少将を殺そうと思った。それも否定はせん。だが皆に説得されて考えを変えた」
そう言って、公爵は周囲を見渡した。説得したのは彼らか。
「陛下より軍規を正せといわれているのだぞ。ミッターマイヤー少将を殺せばどうなる? 陛下の命を果たしたものを殺したという事に成るではないか。リッテンハイム侯とリヒテンラーデ侯は必ずわしを責めるであろう。陛下の命に背いた事、陛下の命を果たしたものを殺した事、どちらもわしを失脚させるだけの名分がある。軍はもちろんミッターマイヤー少将を殺したわしのことを快くは思うまい。そうなれば今度反逆者として討伐されるのはブラウンシュバイク公爵家だ」
ブラウンシュバイク公の声には苦い響きがある。認めたくない現実を認めたという事か。しかし何故ミッターマイヤー少将を監禁している?
「ならば何故ミッターマイヤー少将を監禁しているのです」
「意趣返しだ。せめて殺される恐怖でも味わえばよい」
なるほど、判らんでもない。
「あいつらはわしの立場など何も考えておらん」
「立場、ですか」
「うむ、コルプト大尉を殺すなとは言わん。陛下の命に背いたのだからな。だがせめてわしの顔を立つようにしてくれと言いたい。そうすれば、わしとてまだ腹の収めようが有る。あれではわしの顔が潰れたままではないか。貴族の当主の立場というものが全くわかっておらん。大変なのだぞ、リッテンハイムやリヒテンラーデを相手に陛下の女婿を務めるのも。そうは思わんか」
気持ちは判る。だが俺に同意を求めないでくれ。
「ロイエンタールとい
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