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トンデケ
第八話 地下都市
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庫も置いてある。

百香は荷物の中から摩周のおマルを取り出し、砂を入れた。

「摩周、お疲れ様。ここが新しいおうちよ。」

キャリーバッグをそっと開けると、
摩周は一旦顔を出したが、またすぐ引っ込めてしまった。
(この子は神経質なところがあるから、ゆっくり慣らしていこう。)
部屋には小さな鏡と洗面台があるだけで、トイレは外の共用しかない。
いたってコンパクトな造りだ。
(そういえば、観光で乗った寝台列車の個室もこんな感じだったな。)
(しつら)えを一通りチェックし終えると、
百香は容器に水と餌をセットし、キャリーバッグを覗き込む。

「摩周、ママちょっと出てくるね。いい子にしててね。」

百香は部屋を出るとエレベーターでロビーまで下りた。
武井は空になったコーヒーカップを
ダストボックスに捨てようとしているところだった。
ボックスの蓋が締まると、しゅぽっと吸い込む音がした。

「ダストシューターになっていて、ゴミは集積場へ直行です。」

「あら〜、便利。」

「施設内のゴミ箱はすべてこれです。ゴミの焼却熱は空調や温水に使われてます。」

「信じられない。こんな世界が地下に広がってたなんて…」

「驚いたでしょ。さあ、それじゃ、楠田博士の居る研究室に行きましょうか。
 ここからはカードもライドも必要ありません。さ、私の肩につかまって。」

移動は簡単、乗り物いらず。本当にこの能力は持っていると便利。
しかし、あまり多用しすぎると運動不足になってしまいそうだ。

瞬間移動した部屋では大勢の人間が忙しそうに働いていた。
正面の壁は大型モニターになっていて、何か不思議な映像が
ビリビリとノイズの線を走らせ、ぼんやり映し出されている。

「博士! どうです? 新しいこと、何かわかりましたか?」

武井が楠田を見つけ声をかける。

「ええ…、それがねぇ…」楠田が言いよどむ。

「どうもねぇ、予想外のことが起きてるんです。」

「予想外?」

「私が研究してきたスーパーホットプルームとは少し違うようなんです。
 何か得体の知れない物体が浮かんで来ているんですよ。」

「ええ!? どういうことですか?」

「うーん、なんと言ったらいいのか… 地球が出産しようとしている、とでもいうか……」

「はぁ? 出産!? 地球が…ですか?」

百香は後方で楠田の顔にうっとりしながら会話を聞き流していたが
『地球が出産』という言葉が明確に脳裏をずどーんと撃ちぬいた瞬間、目が覚めた。
どうやら、人智を超えた、何かとてつもないことが起ころうとしているようなのだ…。

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