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トンデケ
第八話 地下都市
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とベンチがついていた。

「下に着くまでちょっと時間がかかるので、どうぞそこに座ってください。」

“S”ボタンを押し扉が閉じると、エレベーターが下降し始め徐々に加速する。
耳がつんと詰まって痛い。これは相当な速さだ。
なのに2分経ってもまだ着かない。
百香はこういう狭い場所が大の苦手だ。
だんだん落ち着かなくなってきて、たまらず「まだですか?」と尋ねた。

「ええ。聞いたところでは深さがおよそ10キロにもなるそうです。」

「そんなに?」

「ええ。第二次大戦中から掘られていた穴だそうですよ。
 このエレベーターは最高時速が60キロですから、下まで10分はかかりますね。」

「うわぁ〜、そうなんですか。他に入口ってないんですか?」

「政府の主要機関の建物に地下通路があって、この施設とも繋がっているようです。」
 
「へぇ〜。あのう、地下ってどんなところなんですか?」

「ちょっとした地下都市ですね。生活に必要なものがほぼ揃ってます。
 宿泊施設、食堂、コンビニ、学校や病院、大浴場、テレビ局まであります。」

「へぇ〜、すごい!」

「各施設の利用もこのカード一つで事足ります。」

首から下げたカードを振って武井は得意げにそう言った。

「へぇ〜。」

「あなたは今日からアイズの一員です。
 ですからちゃんとお給料も出ますよ。
 準備金としていくらかチャージしてもらいましたから、
 利用時に金額をチェックしてみてください。」

「まあ準備金まで? それはありがたいです。」

(やった〜! これで食うに困らないぞ。)
不謹慎にも内心でガッツポーズ。

しかし、まだ、着かない…。
じりじりと時間がすぎ、百香の我慢が限界に近づいた時
エレベータがふっと浮き、ようやく止まった。

扉が静かに開く。
フラッパーゲートを抜けるとそこには、
アーチ型の通路が放射状に広がっていた。

「ここからはもう能力を使って大丈夫なんですが、
 今日はせっかくだし、これを使ってのんびり行きますか。」

武井が指さしたのは遊園地にあるようなライドであった。
百香が重い荷物を持ち上げようとしたが、
武井が即座に後部座席へ飛ばしてくれた。

「あはは。杖を使わないだけで、まるで魔法使いですよね。」

「そうですとも。ハリーポッターはこの私がモデルなんですよ。」

武井が誇張して胸を張る。
座席正面のタッチバネルで“日本語”を選択し
目的地をセットすると「シートベルトを締めてください」と音声ガイド。
すると、ライドはゆっくり右にスライドし始めた。
何本目かの通路の前で一旦停止。
間もなくライドはすーっと前へ滑るように動き始め
トンネル内を加速しながら走り出
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