暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十七話 来訪者(その1)
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
クリアだ。

「ロイエンタール少将、此処へ行ってもらえますか」
ヴァレンシュタイン中将は一枚のメモ用紙を寄越した。リルベルク・シュトラーゼ×××−×××。

「ここは一体?」
「ラインハルト・フォン・ミューゼル大将が下宿しています」
ミューゼル大将? 金髪の小僧と呼ばれている男か。しかし何故?

「彼に事情を話し力になってもらいましょう」
どういうことだ。この男は直接は力を貸してはくれんのか。
「ロイエンタール少将。私はこれからしばらくの間、宇宙には出られません」
確かにそうだろう。目の前の男は万一の場合、帝都の治安を一手に握るはずだ。だがそれがなんなのだ?

「戦場では何かあっても、役には立てないということです。ミューゼル大将なら戦場であなた方の力になってくれるでしょう。貴方たちは武勲を挙げ昇進しなければなりません。貴族たちに潰されないだけの地位を得る事が必要なのです。私と一緒では安全かもしれませんが、弱い立場のままです」
「!」

確かにそうだ。俺達自身が強くならなければならない……。
「ミューゼル大将は軍事の天才です。今はまだそれほど評価されていませんが、いずれこの宇宙を震撼させる存在となるでしょう。覇気も野心も有る、将来を賭けることの出来る人物です」
それほどの男なのか、ラインハルト・フォン・ミューゼルは。

「彼が私たちの力になってくれるという保障は無いでしょう。ローエングラム伯爵家を継ぐという噂もありますが」
「意味がありませんね。彼は門閥貴族とは相容れない存在です。たとえ伯爵家を継いでも、門閥貴族たちが仲間として扱うはずが無い。反って反感を示すだけでしょう。彼がこの帝国で揺るぎ無い地位を得るには軍で力を伸ばすしかないのです。彼には有能な信頼できる味方が必要です。彼の手足となって働き、門閥貴族と敵対する有能な味方が」

ヴァレンシュタイン中将はまっすぐに俺の目を見てくる。優しげな瞳なのに吸い込まれそうな気がする。圧倒されているのか俺は。
「ロイエンタール少将、ミューゼル大将にお会いしたら伝えてください。今はまだそちらには行けません。私がミューゼル閣下と結んだ事がわかると門閥貴族たちが過剰に反応する。私はミュッケンベルガー元帥の配下で無ければならないのですと。しかし、いずれ同じ道を歩ませていただく。閣下が元帥府を開かれた折はお呼びいただければ有り難い。たとえそれが反逆者になる道であろうと歩く覚悟があると」
「!」
反逆者になる道……、俺は反逆者になる道を歩けるか?

「……小官もミッターマイヤー少将を助けていただけるのであればその道を歩みます」
「では、私たちは志を同じくするものですね」
俺はしっかりとうなずいた。もう退けない、退くことは出来ない。

「中将、小官はミューゼル大将とは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ