第六話 声も身体もその十一
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「大きい人になりたいんだよ」
「実際の坂本龍馬みたいに」
「あの人がそんな字とか髭とかにこだわったかっていうと」
「こだわってなかったね」
「まずそうだろ」
そうだっただろうというのだ、坂本龍馬は。
「もっと遥かに大きい人だっただろうからな」
「龍馬もだね」
「髭や字にはこだわらないさ」
「僕をだね」
「ああ、御前自身を見てな」
そのうえでというのだ。
「一緒にやっていきたいな」
「そう思ってるんだね」
「だから御前もな」
優花もというのだ。
「そうしたことにこだわらないでな」
「大きくだね」
「考えたらいいだろ」
字や髭のことにはこだわらずにというのだ。
「世の中大きなことがもっと一杯あるからな」
「そうだね、これは僕のことでね」
「しかも別に死んだりしないだろ」
「うん」
その通りだとだ、優花も答えた。
「そんなことはないよ」
「本当に字なんてそれぞれでね」
龍馬はさらに言った。
「髭なんて生えない人も多いさ」
「そうだね、最初からね」
「だから気にするなよ」
どちらもというのだ。
「全くな」
「わかったよ、じゃあね」
「ああ、それじゃあな」
「そうだね」
「そうしたことよりもな」
むしろとだ、ここで龍馬はうどんの中の葱をおつゆごと口の中に入れてその両方の味を楽しみつつ言ったのだった。
「デザート食わないか?」
「デザート?」
「ああ、お昼のな」
「デザートって」
「アイスクリーム食わないか?」
具体的なデザートはこれだった。
「そうしないか?」
「アイスクリームね」
「最近好きなんだよな」
「前から好きじゃない」
龍馬は、とだ。優花は彼に笑って返した。
「アイスは」
「最近特になんだよ」
「アイスにはまってるんだ」
「それでだよ、うどんと親子丼食ったらな」
「アイスだね」
「食わないか?」
「アイスだね」
優花は龍馬の言葉を受けてだ、ここで。
親子丼の御飯と卵、そして鶏肉と葱の四つの味を同時に口の中で味わいながらだ。そのうえで彼に答えた。
「バニラかな」
「バニラでなくてもいいんだけれどな」
「チョコレートとかストロベリーでも」
「とにかくアイスなんだよ」
「アイスを食べたいんだね」
「一日一回はな」
それでこの昼はというのだ。
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