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どんなになっても
6部分:第六章

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第六章

「別にね」
「何でそう言えるんだよ」
「全く」
「全くって。猫いいじゃない」
 だからだというのである。
「猫と一緒にいればそれだけで幸せにならない?」
「ならないよ、そんなの」
「幾ら何でもね」
「そこまでいたら」
 それぞれ話す彼等であった。彼等にとってみればそれだけの数の猫がいるだけでも想像のできないことである。しかもそれだけではないのだ。
「おまけに。凶暴みたいだしな」
「そういうの見たらね」
「どうにも」
「いやいや、それがまた可愛いんだよ」
 そうだというのである。アブドル本人はだ。
「やんちゃをするところがこれまたね」
「やんちゃ・・・・・・」
「そのレベルで」
「そうだよ。やんちゃじゃない」
 あくまでそれだと言う彼であった。
「それしかないじゃない」
「そうなんだ。それって」
「幸せなんだ」
「そうだよ。僕は本当に幸せだよ」
 猫に囲まれたその生活がだというのだ。
「妻もいるしその妻だってね」
「猫が好きだから」
「それでなんですか」
「さて、子供ができたら」
 このことも考えているのであった。この辺りは彼もとりあえず人間であることがわかる。
「その子供もね」
「その子供も?」
「どうするんですか?」
「猫好きにするよ」
 そうするというのである。
「絶対にね。いや僕の子供だから絶対にそうなるね」
「やれやれ。これは」
「処置なしですね」
「全く」
 そんな話をしながらアブドルを見るのであった。その幸せな彼をだ。そしてこのやり取りから数ヶ月経ってから。これまでになく全身傷だらけになって出社してきたのである。
「やあおはよう」
「おはようって」
「その傷は一体」
「何が」
「何がってどうしたんだい?」
 アブドルは驚く皆に対して笑いながら言葉を返すのだった。そうしながら自分の机に向かってそこに座る。本当に何事もなかったかの様にだ。
「いい朝じゃない」
「いや、その身体だけれどな」
「今日は特に」
「ズタズタじゃないか」
「聞いてくれよ、遂に五十匹になったんだ」
 その彼等に対して屈託のない声をかけるアブドルだった。
「遂にね。五十匹にね」
「五十匹」
「そこまで増えたんですか」
「そうだよ。まあ流石にこれ以上は無理かなって思うけれど」
 五十匹をメドとしているのであった。それは確かにきりのいい数字ではあった。

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