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幽霊でも女の子
1部分:第一章
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は勝手にしろ」
「ヤクザと同居でも平気さ」
 しかし政之はそう言われても全然平気であった。まるで蛙の面に小便であった。本当に態度が全く変わりはしないのだ。
「そのヤクザ屋さんノイローゼにして出て行ってもらうしね」
「ヤクザだと思うのかい」
「そうじゃないのかい?」
 政之は親父の剣呑な口調からそう考えていた。しかしそれはどうやら違うようであった。
「まあそれは行ってからのお楽しみだね」
「また随分と意地悪いな、あんたは」
「御前さんの性格に比べればましだよ」
 親父はこう政之に言い返した。冗談ではないといったふうであった。
「全く。御前さんみたいな奴ははじめてだ」
「タフだとは言われるね」
「いいふうに考えるんじゃないよ、あんたは図太いっていうんだ」
 この親父も結構な性格として周囲から評判であったが政之はそれ以上であったのだった。
「そんなあんたなら絶対大丈夫だね」
「その部屋でもか」
「というかあれだろ」
 また政之を剣呑な目で見てきて言ってきた。
「あんたは戦場でも死体が側に転がっていても平気だろ」
「銃弾が来ないところで寝て死体はどっかによけておけばいいさ」
 彼はその嫌味に満ちた問いに平然として答えた。
「それだけじゃないか」
「だろうな。じゃあほれ」
 ここまで話したうえで鍵を出してきた。
「それでこれが地図だ」
「駅からすぐ側なんだな」
「そうさ、駐車場もある」
「いたせりつくせりな部屋だな、何か」
 政之はさらに満足した。本当に全然平気である。
「これで月二万かよ」
「普通はここで幾ら何でもおかしいだろうって思うもんなんだがな」
「そのおかしいことに平気ならそれでいいんだよ」
 政之はまた平然として親父に言葉を返すのであった。
「あんたには悪いけれどな」
「ふん、じゃあとっとと行っちまいな」
 親父はこう言い捨てて彼を行かせた。
「家賃は毎月こっちに送るだけでいいからな」
「手渡しじゃなくてもいいのか」
「あんたの顔は二度と見たくないんだよ」
 ここまで嫌いな相手に貸す部屋だ。やはり絶対に何かがあるのであるがそれでも政之は平気な顔をしたままであった。しかもこれが虚栄ではないから凄いのである。
「わかったな。じゃあさっさと行っちまいな」
「わかったよ。まあこっちにはちょくちょく来させてもらうぜ」
「こっちとしてはそんな気遣いは一切不要なんだがね」
「気遣いじゃないさ。ここのお茶とお菓子が美味いからさ」
 今出されているお茶とお茶菓子について述べてきた。
「随分いいものを出してるね。幾ら何でも部屋を貸している人間が来たらこれ位出してくれるよな」
「あんただけは特別に出さないでいたいがね」
 そうは言っても出さないわけにはいかない。彼も商売人だ。最低限の
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