あの軍師 〜小さいおじさんシリーズ4
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、張飛と大体同ベクトルの馬鹿じゃないですか。私の在世にあんなのが士官しにきたら叛骨の相があるとかなんとかテキトーなこと言って速攻で打ち首にしています」
「まじかお前、あれテキトーだったのかよ!!」
「―――俺は分かっていたよ」
貴様はそういう男だ…そう呟いて、端正は麦茶を啜った。暑くなってからは、俺がさりげなく汲み置いている麦茶をガラスの猪口で呑むのが彼らの定番となっている。白頭巾だけはサイダーに異様に興味をもつが、他の二人は嫌がって見向きもしない。
「魏延もな…余のところに仕えていれば…」
大きく息をつき、豪勢は遠い目をした。端正が小さく笑う。
「…卿の部下に多いタイプではあるな」
羽扇の影で、白頭巾がぷっと吹き出した。
「あぁ、そうですねぇ。一桁の暗算出来ない方々…」
「本っ当、言動の隅々まで嫌味が行き渡っているな貴様は。感心するわい」
「あの猫ちぐらに籠っている男が貴方に士官したとして…典韋やら許緒やら…貴方の大好物の脳筋武将に揉まれて胃壁を摩耗する状況が目に見えるようですね…んっふふ、失礼」
羽扇に隠れてはいるが、肩は激しく上下しながら震えている。…明らかに大爆笑している。猫ちぐらから聞こえるすすり泣きが、ひときわ高くなった気がした。
「うっふっふふふ…どう転んでも運もタイミングも手の施しようのない御仁ですなぁ…」
豪勢が顔を真っ赤にして立ち上がった。
「きっ貴様に言われたくないわ!頭でっかちのゴミ武将ばっかり揃えやがって!泣いて馬謖を斬るなどという不名誉な慣用句、末代までの恥だからな!!!」
「言いますな。…ならば一番の豪傑を呼ぶがよろしい。返り討ちにして差し上げましょう」
「おのれ、嫁を召喚する気だな!?あれはもう卑怯だぞ!!」
「あぁ煩い、静かに茶を嗜まれよ」
ゆったりと茶を呷り、端正が大きく伸びをした。こいつがこういうポジションに就くのは珍しい。彼は肩で大きく息をしながらどっかりと胡坐で座る豪勢に、すっと目を向けた。
「卿は彼をどうしたいのだ?猫ちぐらから引っ張り出したいのか」
「――旧交を温めたい、だけなのだがなぁ」
旧交を…か。しかし、俺が知っている限り、あの男と豪勢は…
「はて、旧交…。あの男は、それを望んでいるようには思えませぬがねぇ」
バリバリと小さな、それでも彼の手には余る海老せんべいを齧りながら白頭巾が呟いた。珍しく、少しイラついているように見える。そして自分の頭ほどの猪口を抱え上げて麦茶を一口すすると俺のハンカチで口を拭った。そして言った。
「――貴方は一体、彼に何をしたのですか?」
しん、と水を打ったように静まり返った。猫ちぐらの男の呻き声も、ふと途絶えた。
「ぐぬ……」
豪勢が小さく呻いて俯いた。これもこの男には珍しい。
「し、仕方がなかったのだ。あの
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