第一章:大地を見渡すこと その参
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、はたまた彼らの下となって戦うことになるののも悪くは無い。それ以上にこの時代を自分の力で生き抜きたい。」
これらのことが彼の脳裏を強く占められており、彼が『遊びの仁』となるまでに活躍してきた最大の理由でもあった。
その彼の心を未だ知らずに枕に顔をうずめる詩花。彼が自分の予定をあーだこーだいううちに、彼女を覆う雰囲気から棘がとれてくるのが感じられた。
ひょっとしたら先ほどの不快感が消え去って、自分の話にまた耳を傾けているのか。
(よし!これで大丈夫!)
彼は安堵感を胸に自らの話を続けようとするが、その意をなにかの健やかな息が挫いた。不意を打たれたように口を動かそうとするのを止めて、首を傾げて詩花の方を見る。顔は枕にうずめることをようやくやめて横を向いている。胸が健康であることを示すように呼吸音とともに上下に動いている。自分の疲れを癒すために口から幸せそうな息が洩れる。
(あれ?)
頭にわいた疑問を解消するために、寝台に横たわる彼女の表情を確かめることを顔を覗き込む。そしてそれを確かめると、頭に片手を置いて思わずため息を出した。詩花は既に寝息を立てていたのだ。安心しきって気持ち良さげに眠る彼女を起こすような、邪推な真似をする気は毛頭無かった。色々な町を回ってきて路銀を稼いできても、今日のように暴漢達に命からがら追われる事は惹起してこようとしなかったのであろう。体の内にはぬぐいがたい疲労が鬱積し、それが今不快感とと共に吐き出されて眠気がきたのだ。
(まぁ、別にいいか。)
疲れている体をゆっくりと休めることもまた喜びの一つである。今は静かにして置いてあげよう。そう思った仁ノ助は彼女が眠る姿を見て頬を緩める。今日一日で驚くくらいに色々な姿を見てきた気がするが、今の姿は案外彼女に一番似合っているのかもしれない。何をするわけでもなく、ただぼおっと体を伸ばして羽を広げる姿。乱世に向かって飛び込むには今少し時を過ごしてより成長する必要があるだろう。彼女に風邪を引かないように布団をかけ直す。
少しも身じろぎしないことからぐっすりと眠っていることがわかる。そこまでのことをして、ふと肝心なことを思い出した。
(・・・・・・食事代、明日払うことになっていたんだっけ・・・・・・)
宴の食事代だけで既に彼の持ち合わしている金銭を軽くオーバーしている。商人と売買を行ってもひょっとしたら足りないなんてこともありうるかも。思わぬ頭痛を覚えてしまった彼は恨めしげに詩花を見るが、怒る気がしてこなかった。寧ろ彼女の今後の行動が心配にってきている。
目を僅かに覆う髪の毛を掻き揚げてやると、彼女は少しみじろぎをした後に口元が僅かに和んだ。よく眠るものだと感心しながら、彼は彼女に背を向ける形で寝台に横になった。無防備に眠っている
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