第一章:大地を見渡すこと その参
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られていた皿がタワーのように積み重なっていることを思い出し、そちらへ思わず目をやった。皿の数は種類を問わず大小含めて優に十五は下らないだろう。積み重ねられたそれは見事なバランスを保って机に鎮座している。
自らの戦果を誇るかのように鼻を鳴らして、自信満々に再度仁ノ助を見た。
「何驚いているのよ?こんなのまだまだ序の口よ」
「頼むからそろそろやめてください。お願いします、詩花様。」
先も説明したが、彼女の食事代は自腹である。二人で食べている立場上、料金の請求先に自分も含まれている事は明らか。もうこれ以上食われたら生活必需品すら買えない。
頭を垂れて腰をほぼ90度に曲げる彼を見て、自信気に満ちた顔に苦笑いを浮かべる彼女の名は錐琳|《すいりん》、真名は詩花|《シーファ》という。
先ほどの戦いに感謝の意を伝えた彼女に対し、「当然のことをしただけです。それよりも貴方が無事で何よりも良かった。」と返した仁ノ助に、謙虚な心を見出した彼女はいたく感動し、自らの真名をあっさりと告げたのである。当然そのあまりに軽い動悸に驚いて受け取れないと断ったが、斬り捨てた賊共の攻勢が馬鹿馬鹿しく思えるほどの熱意で迫られ、不承不承という感じに受け取ったのである。「この女は放っておくと行く先々で変事に巻き込まれそうだ」という、確信めいた思いがこの時、彼の心に自然と出た事を補足しておこう。
なんやかんやで食事を交えながら話をするうちに、口調から丁寧さが取れて地が出てくるまでに仲が良くなった二人は、店の主人から振舞われる料理に舌鼓を打っていた。
(にしても、近くで見るのと遠くで見るのとはぜんぜん違うな)
頭を上げて椅子に座り直す彼は、またラーメンに視線を注いで目を輝かせて口のか端から涎が毀れんばかりににやつく彼女を見詰める。
目元は柔らかな性格を携えるが如く作られており、今デレデレとしている眉は平時のときでは穏やかなカーブを描き、戦時には凛とした目つきを支えることを彼は両方とも知っている。目は大きく可愛らしい印象を十全に表し、鼻立ちもよく整っており美しさを欠かすことをない。赤い髪は全体的にショートカットに切られており、ボーイッシュでありながら自らの可憐さを強調している。町を歩けば十人中八人は彼女を見つめ直すであろう、そんな優れた容姿の者の特権を持つ一人が彼女であった。
ラーメンをかき込む姿すら思わず可愛いとも思えてしまう自分に呆れながら、仁ノ助は目を頭上にやって今後の自分の行動を考え始めていた。
「んじゃ、今は一人旅の途中ってわけなんだ・・・。ふ〜ん、てっきり仕官先を探して大陸を歩き回っているかと思ったわ」
「仕官は確かに考えているけど、それはまだまだ先の話だな。今は旅すがら、大陸の情報収集を中心としているよ」
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