暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第15話?鏡血花
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さら気づく。
?左手で少し手こずりながら、今度こそ上着の右ポケットから転移結晶を取り出す。そして、ふう、と小さく息を吐いたあと、左手をかざす。
「転移、《アルーシュ》」
?言い終えたあと、視界が真っ白に染まっていく。
?次に目を開いたときには、僕は夕焼け空の下で目を細めていた。

???*

「あいつ……今頃頑張ってるのかしらね〜……」
?空が茜色に染まった頃、あたしは自分で引いた絨毯の上に座って、小さく呟いた。
?頭のなかで思い起こしているのは、数時間前に一緒に昼食をとったお得意様であり、友達の顔。
?見た目はあたしと同じぐらいの年齢に見えて、男性としては髪が長く、少しつり上がった目が大きい少年。
?だけど、その正体は、このゲームをクリアせんと日々奮闘をしているトッププレイヤーの集まり――攻略組のひとりだ。こんなに人の心を和ませるような優しい笑顔をするのに、攻略組だと知ったときは度肝を抜かれたものだ。人は見かけにはよらない、とはよくいったものだと素直に感心したのを覚えている。
?はじめて会ったのは、あたしが鍛冶屋として働きはじめて、色々とコツや要領がつかめてきたとき。まだまだ鍛冶職人としても新人のなかの新人で、お客さんが全然来なくて、売り上げがまったくなかったときだ(まあ、今もそんなに売上が良いとは言えないんだけど……)。
?誰もがあたしの作った武器たちに見向きもしなくて、落ち込む――いや、むしろイライラしていると、ひとりのプレイヤーがあたしの露店の前で足を止めた。
「い、いらっしゃいませ!」
?あたしは弾くように下がっていた頭を持ち上げて、今よりももっと未熟で下手だった接客スキルを発揮し、声を張り上げた。
?そこにいたのは、体を反らしてたじろいでいる少年だった。どうやら、いきなり出した大声にビックリしたらしい。
?あたしは「やっちゃった〜!」と思い、反射的に立ち上がって頭を下げた。
「す、すみません!?びっくりさせちゃって!」
「い、いえ、僕の方こそ何か、えっと……すみません!」
?お互いに気まずい沈黙が数秒ほど流れたあと、話を切り出してきたのはむこうだった。
「と、とりあえず武器を見せてもらっていいですか?」
「あ、はい!?どうぞ!」
「じゃあ、遠慮なく……」
?あたしは、まるで面接を受けているような気分になりながらも、ずっと目の前のプレイヤーを見ていた。
?フードのついた革製の灰色の上着の下に、無地のシャツ。ズボンは丈が長いのか、下で折り曲げて調節をしている。見えている裏地の部分の長さから考えると、結構折り曲げていた。全体的に見て、地味だった。身につけている本人の目立ちたくないという想いがありありと伝わってくるというか……。
?そして、一番気になったのは、少年が肩に背負っている武器だった。曲刀――
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