MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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の心の近くまで行けたことには、変わりはないから』
それは、ユウキ自身がだれかに教わったことだったのか、あるいは、彼女の経験から来る言葉だったのか。そんな風に感じさせるどこか懐旧に近い響きが、ユウキの言葉にはあった
「……うん、そうだね……ユウキがそうしてくれたから、私達こうやって、こんな短い時間で仲良くなれたんだもんね……」
『んーん、それは違うよ。それは、アスナたちのおかげ』
「え……?」
『アスナがボクを追いかけてきてくれて、サチやリョウさんがアスナを連れてきてくれたからだよ……』
「クス……ううん、それなら、それは私達じゃない。明日奈のおかげだよ?明日奈、ホントに一生懸命だったから」
『そうなの?……そっかぁ……』
クスリと笑って美幸が明日奈のほうを見た。戸惑ったような様子の明日奈に、ユウキは嬉しそうに尚も言った。
『昨日、モニタールームのアスナを見て、声を聞いてたら、アスナの気持ちがすごく伝わってきたんだ……この人は、病気の事を知っても、それでもボクにもう一度会いたいって思ってくれるんだって分かって……ほんとに、嬉しかったんだよ、泣いちゃいそうなくらい』
少し恥ずかしそうに言うその言葉は、彼女の言葉が心からのものであることを伝えていた。ほんの一瞬言葉を詰めてから、ユウキは続ける。
『だから……お母さんとも、あの時みたいに真っすぐ話してみたらどうかな……?気持ちって、伝えようとすればちゃんと伝わる者なんだって思うよ?』
「…………」
それでも、ほんの少しの気後れが、明日奈の心を迷わせた。黙り込む彼女に、ユウキは今度は明るく続ける。
『……大丈夫!アスナはボクなんかよりずっと強いもん、ほんとだよ!』
自分が、強い。
彼女の言葉にふと美幸を見る。いつものようにやわらかな、けれどどこか強い意志を持って、彼女はユウキに同意するようにコクリとうなづいた。
「ユウキ……」
『アスナがどーんっ!ってぶつかってきてくれたから、ボクはこの人にならボクの全部を預けられるって、そう思えたんだ』
「……ありがと……ありがとう。ユウキ……」
彼女の言葉が、暖かい力……勇気となって、胸にしみこんでいくのを感じる。
完全に日が沈んだ夜空には、都心の強い人口の光にも負けない星たちが、キラキラと瞬いていた。
────
「それじゃ、また明日ね、ユウキ!」
『うん!また明日!気をつけてね!』
「うん、ありがとう」
星川駅に戻ったところで、プロープのバッテリー残量アラームが鳴った、
ユウキと挨拶を交わして別れ、美幸と明日奈は東横線に乗って都内へと戻る、乗ってから、20分ほどが経過しただろうか?唐突に、美幸がこんなことを言った。
「あの、アスナ……ちょっとだけ、聞いていいかな?」
「え……?どうしたの?」
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