壱章
陸奥の しのぶもぢずり 〜上〜
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________その様子を一羽の一際大きな、三つ足の鴉が見つめていたなんて気づいたのは自分だけだろう。
鴉は伊達政宗を鋭利な劔の様に敵意に満ちた目で一瞥し織田信芽が屋敷に入って行くのを見届けた後、名残惜しそうに暫く彼女の自室を見つめ何処かにへと飛び去って行った。
その辺に居る鳥類に人間的な感情があるかは不明だが【彼】の使いである者なら可能だろう。
【彼】直々に使いを遣わせるなんて滅多にないだろうし
もしかしたら近いうちに大きな出来事が起きるかもしれない。
それに備えそろそろ小生も戻ろうか………
……おや…彼処に居るのは……………。
…訂正しよう、どうやら小生以外にもあの鴉を見つけたものがいたようだ、まぁ【彼女】が気づかないはずもないだろうが。
小生のよく知っている姿の面影はあるが随分見た目の齢が変わっている、もしかしたら【彼女】の趣味なのかもしれないし案外特に意味の無い気紛れかもしれない。
【彼女】が織田屋敷に居るということは随分前にあの娘、『織田信芽、又は土御門鈴彦』の正体に気づいていたようだ。
…さて、今度こそ小生も消えるとしよう。
あの娘について気になる事は山ほどあるがこれからは幾らでも機会はあるし。
それよりも、今此処で【彼女】に見つかったら消し炭にされてしまうかもしれないからね。
___男は青い襟巻きで隠れた口許に微笑を浮かべ、先程まで立っていた場所に青い光の粒子を残して文字通り、跡形もなく消えた。
彼が其処に居た事を知るのは、西の空に耀く蒼白い月のみだろう。
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