シーン4〜5
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しく生きたい。サ ラリーマンになってやりたくもない仕事をやらされるより、自分らしい生き方を見つける方が大 事なんだ。』なんて言ったりしますが、あれも抑圧のメカニズムが働いてるんです。」
春香「サラリーマンになれなかった自分への言い訳ですね。」
野口「本来の願望を抑圧して自我の崩壊を防ごうとしているんですよ。」
春香「そうか。でも、抑圧したからって願望が消えるわけじゃないですよね。」
野口「そう。心の底に願望は残っていて、それがいつの日かあらわれないとも限らない。」
春香「もし抑圧のはけ口が見つからない場合、そのうっぷんはどこへ向かうんでしょうか。」
野口「夫婦の場合だと不倫とか、最近増えてる幼児虐待。」
春香「若者による無差別殺人なんかはどうですか?」
野口「あれは人格障害が要因の場合が多いですね。一般的な場合だと人に対する敵意というのは連鎖す るもんなんです。いわゆる、置き換えの心理ですね。」
春香「置き換えの心理。」
野口「ええ。夫に怒鳴られた妻は子供に八つ当たりし、母親に叱られた子供は下級生や下の兄弟をいじ める…、といった具合にね。」
春香「今問題になってるいじめにも抑圧や置き換えの心理が複雑にからんでいるのかも知れませんね。 もう一度、心理学勉強してみようかしら。以前、心理療法のセミナーに通って勉強したことが あって。」
野口「へぇ。島田さんは勉強熱心なんですね。」
春香「そんな… 興味のあることにだけです。」
野口「…あなたを見ていると妹を思い出します。」
春香「妹さんがいらっしゃるんですか?」
野口「ええ、二歳違いの妹がいました。」
春香「へぇ〜。…あれ、今、いましたって…」
野口「ええ。死んだんです、20年前に。」
春香「亡くなった…」
野口「妹は小さい頃はお転婆で、僕と一緒にヒーローごっこをして芝生を駆け回るような元気な奴でし た。成績も良くて、高校なんか僕より偏差値の高い進学校に進んで…。ところが、その頃から、妹 はだんだんふさぎ込むようになりました。両親が心配して妹を精神科に連れていき、薬の効果も あって一旦は良くなったように見えたんですが、結局、高校には通えなくなり中退してしまいま した。それから間もなくして… 自殺したんです。」
春香「えっ…」
野口「一番近くにいた僕がその兆候に早く気づいてやれれば… そう思うと今でも悔しくて…」
春香「
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