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天使の箱庭
シーン3
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そうなんだよな。俺もこの人とまったく一緒よ。」

腿に両手をパンと乗せ、ため息をつく前原。
                   
前原「全然実感がわかないんだ。だいたい、俺の事知らない人は、
   俺がどんだけすごい事故に遭ったかなんて知るよしもないだろ。
   道ですれ違ったって誰も俺に見向きもしなけりゃ、慰めの言葉ひとつ
   かけてくれるでもない。そもそも、事故に遭ったことすら
   夢なんじゃねえかって思えてきてさ。」

すると、野口が真顔で言う。

野口「本当は周りの人たちに気づいてほしいんじゃありませんか?              
   自分がどれだけ大変な思いを抱えているのかを。」        

前原「うーん…。いや、あの事故のことは早く忘れちまいたいかな…。」

野口「前原さんは、今、お仕事の方は。」

前原「俺? 今は仕事はしてないよ。昔は家電メーカーでテレビを作ってたんだ。
   定年後は退職金で店をひらいてさ。趣味だった蕎麦打ちで商売を始めたんだ。
   女房と二人で二人三脚、結構繁盛もしてたんだがね。おととし女房が死んじまって、
   店はやめちまったよ。」

野口「お子さんは?」

前原「娘が一人。結婚して今は富山で暮らしてる。和菓子屋に嫁いだんだ。」

野口「そうですか。じゃあ、前原さんお一人でお住まいなんですか?。お寂しいですね。」                                           
前原「でもねぇよ。最近、陶芸を習い始めて仲間もできたんだ。蕎麦の練り技が土こねるのと
   よく似ててさ。だから、練りだけは講師も驚くほど上達が早かった。今じゃ、すっかり
   陶芸にはまっちまってよ。今度地元でグループ展を開くんで、そこに展示する皿や湯呑
   を作ってるところさ。」

野口「そうなんですか。じゃあ今度是非、展覧会に招待してください。ところであの事故の日、
   どうして高速バスをご利用に?」

前原「あの日は大学の同窓会があるんで大阪へ向かってたんだ。それがまさか、あんな大事故
   に遭うとはなぁ…。俺もツイてねえや。ケチらねぇで新幹線にしときゃ良かったよ。」       
その時、俯いていた真壁が突然立ち上がった。
 
真壁「あの、私、もう帰ってもいいですか。」

帰ろうとする真壁を野口が引き留める。
 
野口「真壁さん、待って。今はまだ事故の事を話すのは辛いかもしれないけど、
   ここいる人たちはみな、真壁さんと同じ体験をされた方たちです。
   みんなで事故の体験や感情を共有することで気持ちが楽になることもあるんですよ。
   さあ、座って。みんなの話を聞くだけでもいいですから、も
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