第五話 姉の苦悩その十五
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「それが今です」
「そうですね、しかし」
「それでもですね」
「私は受け入れるべきだと思います」
「この現実をですね」
「先生は弟さんのことを愛しておられますね」
「はい」
その通りだとだ、優子は答えた。
「そのことは」
「私にもかけがえのない肉親だと言われましたね」
「そう考えています」
「それならです」
「この現実をですね」
「早く完全に受け止めて、そして」
それからのこともだ、院長は優子に話した。
「やはり弟さんにです」
「私からですね」
「この現実をお話下さい」
「そしてあの子をですね」
「受け止めたうえで守って下さい」
彼の姉である優子自身への言葉だ。
「そうされて下さい」
「それでは」
「そうすればです」
「弟もですね」
「救われます」
「この現実にですね」
「このことはです」
男から女になっていく、そのことはとだ。院長はあらためて言った。
「確かに有り得ないことです」
「普通ではですね」
「はい、しかし以前にも例があり」
「現実ですね」
「そうです、そして死に至るかといいますと」
「違いますね」
「ですから」
それ故にというのだ。
「何とかです」
「私からあの子に話して」
「そしてです」
「この現実とですね」
「向かわれて下さい」
「二人で、ですね」
「はい」
姉弟でというのだ。
「そうされて下さい」
「弟を守るのは私ですね」
「肉親でありますから」
「血を分けた姉弟だからこそ」
「いえ、血を分けたというよりかは」
ここでだ、院長はこう訂正した。
「絆ですね」
「絆ですか」
「そうです、二人でずっと暮らしておられましたね」
「その中で築いていったですね」
「絆です」
「その絆が、ですか」
「姉弟ではないでしょうか」
院長は優子に問うた。
「では弟さんが血がつながっていなくとも」
「例えそうだとしても」
「弟さんを突き放せますか」
優子の目を見てだ、院長は彼女に問うた。
「それが出来ますか」
「いえ」
そう問われるとだ、すぐにだった、優子は院長に答えた。
「弟は、ずっと一緒にいましたから」
「だからですね」
「その中で色々なことがあって」
「それによってですね」
「院長の言われる絆はです」
「確かにありますね」
「はい」
その通りという返事だった。
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