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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十二話 それぞれの思惑(その3)
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て、もっぱらの評判よ。仲がいいみたいね」
「……」
「?」
どういうわけだろう。二人の反応がおかしい。もしかして……。
「ヴァレンシュタイン少将と何か有ったの?」
「そんな事はありません」
「でも、何か変よ。隠さないで言いなさい」
ラインハルトはジークと顔を見合わせ少しためらいつつ言葉を出した。
「……彼がこちらに好意的なのはなんとなく判ります。ただ……」
「ただ」
「よくわからないのです」
「わからない?」
「ええ、彼が何を考えているのか、私をどのように思っているのか」
なんとなくわかるような気がした。不安なのかも知れない。ラインハルトはヴァレンシュタイン少将を味方に付けたいと思っているのだろう。しかし、ヴァレンシュタイン少将はラインハルトの下につくことに甘んじるだろうか? 軍の階級ではラインハルトのほうが上かもしれない。だが上層部の、軍内部の評価ではどうだろう。残念だけどラインハルトはヴァレンシュタイン少将に及ばないだろう。
ラインハルトには姉のおかげで出世したという評価が常に付きまとう。しかし、ヴァレンシュタイン少将にはそれが無い。誰もが実力で今の地位を勝ち取ったと見るだろう。ラインハルトは頂点に立ちたがっている。地位だけではない、精神的にもだ。そして今、精神的にヴァレンシュタイン少将の上に立てずに苦しんでいる。今回の戦いはいい機会だったはずだ。しかし、勝利は中途半端なものに終わり、ヴァレンシュタイン少将は以前にも増して評価を上げた……。
「彼とよく話してみたらどうかしら」
「話す?」
「ええ、どうせ碌に話していないんでしょう」
「……」
「今度、陛下の快気祝い兼戦勝祝賀会が行なわれるわ。そこで彼と話すのね」
「そこでですか?」
「何もいきなり親しくなれとは言っていないわ。少しずつよ。アンネローゼが無事だった事だってお礼を言って良い筈よ」
「そう、ですね」
そう、少しずつだ。少しずつ親しくなっていけば良い。敵対だけは避けるべきだから……。
■ 帝国暦486年5月25日 新無憂宮「黒真珠の間」 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
快気祝い兼戦勝祝賀会か……。戦勝祝賀会は将官になってからだから三度目だが、他のパーティとかは幾つ出たか覚えてないな。大体話をする人がいないしつまらん。俺と話をしたがる奴は先ずいない。軍人だと将官になるのに士官学校を卒業してから早い人間で大体八年〜十年はかかる。つまり周りは若くて二十代後半ということだ。俺が准将になったのは二十歳のときだから、普通に考えれば士官学校を卒業していきなり准将になってるような感じだろう。誰も話したがらないのも無理は無い。貴族にいたっては平民なんかと口を利きたがらない。
俺と話をするのはリューネブルクぐらいだが、
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