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トンデケ
第三話 覚醒
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、当時の新聞記事と資料を同封します
 ので、勇気を出して読んでみてください。そして、少しでも思い出したこ
 とがあったら、私に教えてほしいのです。それと、できれば一度会って、
 二人だけでお話がしたいです。では、またご連絡します。武井』
 
 同封されていたのは、拡大コピーされた新聞や雑誌の切り抜きで、ご丁寧
 にも難読漢字には手書きのルビまで振ってある。

『理研の加藤康介氏が急死、無理心中か
 理研の研究員、加藤康介さん(三五)と妻で主婦のまり子さん(三二)
 の遺体が埼玉県和光市内の小学校のプールで発見された。
 二日早朝、男女の遺体がプールに浮かんでいると、学校職員から通報が
 あった。朝霞署は無理心中とみて調べている。
 朝霞署によると、プールサイドに落ちていた血のついた包丁から加藤さん
 の指紋が検出され、妻の胸を刺したあと、自らも腹部を刺して無理心中を
 図ったものとみている。
 前日の1日、夜十時頃にも、加藤さんの家から悲鳴がすると通報があり、
 かけつけた警官が管理人と共に合鍵でマンション五階の部屋へ入ると、
 部屋中に多量の血痕が見つかった。
 しかし夫妻の姿はなく、行方を探していた。
 ただ、夫妻が部屋から外に出た形跡は見つかっておらず、瀕死の状態で
 二人がどのようにしてプールまで移動したのかは不明だ。
 また、同じ部屋の寝室で5歳の長女が意識不明で発見されたが、怪我はな
 く、命に別条はないという。
 加藤さんは理研で再生医療に役立つ新たな細胞形成メカニズムを発見。
 専門誌に論文を発表し、一躍注目を集めたが、その後データの不正がいく
 つも見つかり、2日前の釈明会見では責任追及の矢面に立たされていた。
 朝霞署では、当夜の移動経路などを詳しく調べている。』
 
 別紙には、家と小学校に印がついたスケール入りの地図、そして、「!」
 マークや「?」マークが乱舞する雑誌の記事が並んでいた。

『理研の加藤氏が無理心中! ワープか? はたまた、どこでもドア??
痕跡なき夫婦の足どりの謎!!』

『空中浮遊?? 瞬間移動?? 謎の心中事件を大杉教授が検証する!!』
 
 等々、血だらけで瀕死の夫婦が痕跡も残さず、どうやって三百メートルも
 離れた遺体発見現場まで移動できたのか、その不可解な謎を解くため、
 超常現象や様々な論文を例にあげ、おもしろ半分に推理したり、どこかの
 大学教授がそれに真っ向から反論したりと、オカルト雑誌の恰好のネタに
 されていた。
 百香には難しい言葉が多くて内容がわかりづらかったが、父が母を刺し殺
 し、自分も腹を刺して死んだこと、両親の遺体が家の中ではなく三百メー
 トルも離れた学校のプールで見つかった、ということだけは
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