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トンデケ
第二話 過失
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が五時三十六分、
 これは実況見分で確認済みです。で、圷さんが彼と会っていたのが五時
 三十五分頃? だとすると、おかしくないですか? 
 眞鍋さんは徒歩ですよ。彼のバイクは駐車場で発見されてますから。
 事故現場はモールの真下ではなく、大通りに出て、そこから更に
 三百メートル先ですからねぇ。圷さんが気を失った直後、そんな瞬間的に
 眞鍋さんが事故現場まで移動できますか?
 走ったとしても、どうでしょう・・・。」
 
 屋上からエレベーターを使っても、下りるのに1分以上はかかるはずだ。
 モールの敷地を抜け、道路に出て、そこからさらに三百メートル先まで走ったとしても、
 彼がその時間に事故に遭うなんて有り得ないのではないか…というのだ。 

 やっぱり、アレをやってしまったんだわ…
 私が気を失っている間に辰郎は…
 「ふーう」百香はやりきれない思いで深くため息をついた。 
  
 
 (睨んだとおり、やはりこれは、ただの事故じゃないな。
  圷 百香の証言には不自然な点がある。
  ちょっと調べてみる必要がありそうだ。)

 二人のベテラン刑事は胸中にほぼ同じ見解を下していた。

 
 
 後日、壊れたスマホが届けられ、
 それをショップで新しいものと交換してもらった百香は、生き返った思いだった。
 ただ、辰郎のことを思い返すと、なんとも言えない過失感が疼く。
 あれから、刑事は来ていない。百香の証言はすぐに裏が取れただろう。
 だが、辰郎の事故までの行動が理路整然としないことを
 警察は不信に思っているに違いない。
 
「間接的にとはいえ、彼を殺してしまったのは、わたし…」 
 
 罪悪感がのしかかり、潰れそうな心。
 その奥から染み出すように、辛い過去の記憶がじわじわと甦った。
 両親が死んだあのおぞましい地獄の夜を…。
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