四糸乃パペット
雨の中の宝石
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と思ってしまったが、少女は、それでも怖がっているのか、まるで飢えたライオンに怯え、震える小鹿のようだった。
「・・・紐落ちてないかな」
既に生きる勇気を失ってしまった目で周りを見渡すと、地面に落ちているパペットに気づいた。
「キミの?」
「・・・・・・!」
ウサギのパペットを持ち上げると、少女は目を見開き、足を一歩踏み出す・・・が、そこで留まった。
パペットは大事、でも、この人は怖い・・・みたいな顔をしながら、じりじりと間合いを測っている。
「・・・面白い子」
心で思ったことを言葉にすると、パペットを持った手を少女に突き出す格好で、ゆっくりと距離を詰めていった。
「・・・・・・っ!」
少女がビクッと肩を揺らすが、狐珀の意図に居づいたのだろう、あちらもゆっくりとすり足で近づいてきた。
そして、狐珀の手からパペットを奪い取るなり、それを左手に装着する。
すると、突然少女が、パペットの口をパクパクさせる。
『やっはー、悪いねおにーさん。たーすかったよー』
テレビでよくみる腹話術だろうか、ウサギのパペットが妙に甲高い声を発してくる。
首を傾げ、動かしている筈の少女の顔を見やるが、まるで狐珀と少女の間を遮るように、ウサギのパペットが言葉を続けてきた
『―――ぅんでさー、起こした時に、よしのんのいろんなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、どーだったん?正直、どーだったん?』
「・・・はて?」
狐珀はまた首を傾げる。正直言って、確かに少女を触ったが、別にそんなこと気にしていなかった。
すると、パペットは笑いを表現するようにカラカラと身体を揺らした。
またまたぁー、とぼけちゃってラッキースケベぇ。・・・まぁ、一応は助け起こしてくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ルんっ』
「おー。太っ腹」
正直全くそんな事は思っていなかったが、少し面白そうだったので、乗ってみることにし、相変わらず無表情ながら、パチパチと手を叩く。
『でしょでしょ〜?よしのん、太っ腹っしょ〜?』
先程までの少女が演技しているとは思えないそのパペットが器用にパンと手を叩く。それはまるで、別の魂がパペットに入っているような感じだった。
「ボクだったら真似出来ないね」
『ふっふ〜ん!よしのんだからね!』
自信げに言うパペットに、内心凄い興味が湧いていた。どうも昔から好奇心だけは人一倍強いらしく、こういうのにも、自然と対応出来るようになってしまっていた。
『っていうか、大丈夫〜?頭びしょ濡れだけど〜』
パペットがそう言い、また器用に右手を狐珀の頭に向ける。
「あ・・・」
今までのファンタジー小説に迷い込んだような心情に全く気づかなかったが、雨水の力か、風の力か分からないが、フードが取れ、髪を洗う時のようにびしょぬれになっていた。しかも、そこから入
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