四糸乃パペット
雨の中の宝石
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は十香との相合傘を想像してしまい、恥ずかしさが込みあがる。
しかし、相合傘の意味を知らない十香は無垢な水晶の如き双眸を士道に向け、首を傾げる。
「あいあいがさ、とはなんだ?」
「と、十香。そ、それはだな・・・」
一瞬声が裏返り、どうにかしようと脳を無駄に回転させる。
「あいあいがさとは何だ!?」
周りにいる人をお構いなしにそう叫ぶと、余計顔が熱くなる。
「そ、それはだな・・・男女が一緒の傘に入って・・・」
相変わらずこういうことに慣れない士道は、周りの注目がもっと注がれる前に十香の問いに答える。
「なんだそんなことか。ではやってみるぞ」
「あ、あぁ」
現在、男女一人ずつ、傘が一本の状態、相合傘以外の選択肢がないことに、他に濡れずに戻る術を知らない士道は、ただ首肯するだけしかなかった。半月前だろうか、デートした時でも、ある程度の距離であった為、なんとか落ちつけたが、今回、相合傘とは肩と肩がぶつかるであろう程近くなのだ。
商店街のかまぼこ状の透明な天上にギリギリ入っている場所で、狐珀から貰ったビニール傘を開く。
未だ決心のつかない士道とは逆に、十香は何をするかという興味でワクワクして大雨となる道路へと出る
「・・・シドー?」
十香は、隣に来ない士道に気づき、後ろを振り返る。
「・・・シドーは・・・嫌か?」
十香がそう言うと、悲しいのか、眉を八の字にした。
「い、嫌じゃない!」
ようやく決心のついた士道が、十香の悲しさ混じりの問いに少し声を大きくし、タッタッタッ、と軽く走り、十香の持っていた傘の中に入る。
「そうか。では行くぞ!」
先程までの悲しみが仮面かと勘違いするんじゃないかというくらい、屈託のない笑みを作り、歩き始める。その二人の歩幅は、自然と一緒になっていた。
「・・・傘渡したの失敗かな・・・」
商店街から少し離れた場所を走りながら、士道に渡したビニール傘を思い出す。
確かにレインコートで雨は防げるが、頭を濡らさない為に被ったフードを抑える為に出した手に雨がボツボツと当たる。
「・・・まぁいいや」
正直、雨は嫌いではない。
小さい頃、まだ失感情症を患っていなかった時、雨の日は必ず大人用の長靴を履いて、ビシャビシャと水溜りの上を跳ねて楽しんでいた。場所は、今丁度通りかかる神社で。
ふと、昔を思い出し、通りかかる神社の方を向く。その後、先程まで軽快に走っていた足がゆっくりと止まって行く。
足が疲労に耐えかねた訳でも、グショグショになった靴にうんざりした訳でもない。
ただ―――その神社に。
曇天の空から降る水玉よりも、遥かに気になるものが現れた。
「・・・女の子?」
狐珀の唇は、そんな言葉が現れた。
そう、それは、少女だった。
可愛らしい意匠の施されたレインコートに身を包んだ、小柄
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