四糸乃パペット
雨の中の宝石
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その後、再び瞬きをするとリンは消え、狐珀へと戻る。
「・・・帰りたい」
「そうだな・・・」
二人が空を見るが、曇天の空は太陽の光を見せるつもりはないらしく、常に雨粒を降らせ続ける。まるで、三人を拒んでいるかのように降る雨は地面に小さな小川を作る。
「最近天気予報が外れるな」
呆れたような十香の声が流れる。
最近、というか、ここ一週間だろうか、天気予報はてんで当たる気がしない。最近ほぼ毎日降り続ける雨。
何の前兆もなくその雨は突如として空を覆い、昼間だった筈の天空は夜のように真っ黒くなる。
そして、その雨を予測したことはここ一週間ばかし、一度も無い。
既に信用を失った番組はそれでも天気予報をやるが、晴れと言っても皆が傘を持ってくるのが当たり前となり始めている。
皆が空を睨みつけると同時に、狐珀はなにを思ったか、おもむろに上着を脱ぎ、白Tシャツも脱ぎ始めた
「キ、キツネ!?」
目の前で友人といえど、男が脱ぎ始め、羞恥心の持っている十香は顔を赤くし、声を上げる。が、狐珀はただ迷惑そうな目を十香に向け、なにと一言言うだけである
「いきなり脱ぐな!」
「だってこれは気持ち悪い」
「我慢しろ!」
「ボクの辞書にそんなのない」
そう言うと、全く絞っていない雑巾のようにびしょ濡れになった上着を渡すと、スタスタといつ人が戻って来るか分からない商店街を全く気にしていない狐珀は普通に歩き始める。
「あいつに恥じらいというのは無いのか・・・」
「あるっちゃある・・・んじゃないか?」
しかし、高校一年生の頃、体育で着替えている途中の男の更衣室に女子が間違えて入った時も唯一狐珀だけは一切着替える手を止めず、更には風呂場に琴里が間違えて入ってしまった時も、一切驚かず、ずっとシャワーを浴び続けたというのだ・・・狐珀はどこか、外れているところがあるかもしれない・・・
と、上半身裸の狐珀をずっと見ていると、一番早く戻って来たであろう男が狐珀と偶然にも会い、二人の足が止まる。
しかし、男はバリカンで剃ったであろう髪の右側に龍の入れ墨が、そして、虎の書かれている黒い上着から見える肩には、少し変わった緑色の入れ墨が入れられ、耳と口にはピアスが。という、何処からどう見てもヤンキーにしか見えない男なのだ。
「あれ、大丈夫か?」
「見るからに悪い奴だな」
十香が少し警戒しそちらを見ると、狐珀はそのヤンキー男に連れ去られてしまった。
「あ・・・」
しかし、絶対その後を追いかけようとは思わなかった。
翌日、ボッコボコにされた悲惨な被害者が二人増えるだけである・・・
「ま、まぁキツネなら大丈夫・・・じゃないか?」
何の根拠もない事を言うと、十香は地下シェルターから戻ってきた老人や、客に目を向けてゆく。
あれから2、3分程度経過したであろう時、ずっ
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