Side Story
少女怪盗と仮面の神父 7
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目線はあくまでも女神像に定めたまま、耳は背後の集団に傾ける。
村の様子や、今日の天気や、どこの誰がどうしたこうした。
女衆の言葉はどれも取るに足らないものばかりで。
アーレストも、これといって変わった返事はしていない。
いわゆる井戸端会議だ。
もしかして、こんな調子で一日中似たり寄ったりな会話をしてたのか。
人の話を聴くのも神父の仕事……にしたって、軽く拷問だな。
きっと解決させたい問題を相談されてるのとも違うのに、お気の毒。
「神父様は、はるばる王都からいらしたのですよね。そちらではどのようにお過ごしでしたの?」
(うわー。今までそんな言葉遣いしてなかったよね。何枚着込んでるの? 分厚い猫の皮)
「無二の親友達に、大変有意義な時間を与えられました。彼の地での経験はこれから先を生きる希望と言えます。貴女方とも、大切な時間を共有させていただければ幸いです」
笑顔を深めたのだろう。
女衆の黄色い悲鳴が波を打った。
(……微妙に濁してない? それで良いの?)
声の応酬を楽しみたいのであって、内容はどうでもいいのか。
「神父様のご親友となれば、さぞ優秀な方々なのでしょうね」
「ええ。私など彼女達の慧眼や勤勉さの前では霞も同然です。だからこそ、親友達の存在は何よりも誇らしく……愛おしい」
空気が固まった。
親友が女で、愛おしいと形容されたからか。
もしや既に女の影が? と、わずかに滲む沈黙。
ミートリッテだけが眉を寄せて、「ん?」と小さく喉を鳴らした。
(愛しいじゃなくて、わざわざ愛おしいって強調した? 愛おしいねえ……確か、可愛いとか、愛情を示す他に、可哀想とか不憫とか、同情的な意味もあったような。考えすぎ?)
一音下げた言葉がやけに気になって、思わず神父に顔を向けてしまった。
「…………!?」
後悔先に立たず。
アーレストと目が合ってしまった。
筋違える勢いで首を逸らし、跳ねた心音を呼吸でなだめる。
(……なに、あれ)
「私も惚けてはいられません。ご指導、よろしくお願いしますね」
「いえ、そんなっ! こちらこそ……」
「……………………」
どうして……女衆は盛り返せたんだ?
あの神父は一瞬、今にも泣き出しそうな悲しい顔で、微笑んでいたのに。
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