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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十一話 それぞれの思惑(その2)
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ケンベルガーに話しかけた。
「それは、私よりミュッケンベルガー元帥のほうがよかろう」
「そうだな。では私からオフレッサーに話そう」
「はっ。お願いします」
他に、細々とした事を確認し、そろそろ辞去しようとした時だった。エーレンベルクが俺に話しかけてきた。
「そうそう、卿はもう知っているか? 反乱軍の司令長官が決まった」
決まったのか、一体誰だ?
「ドーソンと言う男だそうだ」
「ドーソン中将ですか」
「知っているのか? どういう男だ?」
ミュッケンベルガーも当然の事だが興味ありげに聞いてくる。
「前任者のロボス大将より能力は下でしょう」
「下か」
「それより大切な事があります」
「?」
「反乱軍の政府上層部では、帝国軍が攻勢をかけるとは思っていないようです。そのことがドーソン中将の起用になったと思います。但し、軍上層部がどう思っているかは判りません」
「なるほど、奴らが油断しているのなら場合によっては奇襲が可能か。面白くなってきたな」
ミュッケンベルガーはエーレンベルクと視線を交わすと楽しげな声を出した。
尚書室を辞し、俺はヴァレリーと兵站統括部へ向かった。そしてずっと気になっていたことを考え始めた。本来ならば三年前、重態になるはずだったフリードリヒ四世が何故この時期に意識不明の重態になったかだ。医師の話ではここ最近、戦勝祝い等の祝賀会が続いたため体に負担がかかった、という事らしい。わからないではない、原作と比べてみるとかなり大きく勝っているし損害も少ない。祝い酒も進むだろう。
一方三年前、何故重病にならなかったかだが、あの時期はサイオキシン麻薬密売事件がオーディンに飛び火した時期だったはずだ。いくらなんでも酒飲んで大騒ぎをしている余裕は無かったろう。そういう意味では納得が行くのだ。
しかし、俺は別な事を考えている。非科学的なことなのだが原作への揺り返しが起きたのではないかと思うのだ。今回の戦い、フリードリヒ四世が倒れなければ帝国軍は同盟軍に対して致命的な打撃を与える事が出来たはずだ。そうなれば混乱する同盟軍に対しさらに追い討ちをかけるか、第二、第三の遠征軍を起し、同盟に畳み掛ける事が出来ただろう。
同盟は帝国に対し効果的な反撃が何処まで出来たか。おそらく和平をそれもかなり屈辱的な和平を乞うしかなかったろう。いわばバーラトの和約だ。その先は宇宙統一へと進んだのではないだろうか。しかし、フリードリヒ四世が倒れたことで全てはやり直しになった。多少、原作に比べて差異はあるが、帝国と同盟はイゼルローン回廊を基点とした攻防戦を繰り返す事になるだろう。馬鹿げた考えだとは判っている。それでも俺はこの考えを振り払う事が出来ずにいる。考えすぎなのだろうか……。
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