第五話 姉の苦悩その七
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「ですから」
「男の子が女の子に変わることもあり」
「はい、そしてそれがです」
「弟であることもですね」
「今の様にです」
それこそというのだった。
「あるのです」
「それが現実ですね」
「今の」
「そうですね、ですが」
それでもとだ、優子は院長に言葉を返した。
「私はどうしてもです」
「この状況をまだ、ですか」
「受け入れることに苦しんでいます、そして」
「このことを弟さんご自身に伝えるべきか」
「悩んでいます」
「やはりそうですね、若し私がこの状況になれば」
ここで院長は自分の家族が優花の様になってしまった場合を考えた、そしてそのうえであらためて優子に話した。
「やはりその現実を受け入れられないでしょう」
「院長先生もですか」
「有り得ないとした考えられないです」
現実に絶対はない、それがわかっていてもというのだ。
「自分の血縁者にそうなれば」
「そうですか」
「はい、ですから蓮見先生のお気持ちもです」
それもというのだ。
「わかります」
「そうですか」
「はい、ですが」
それでもと言った院長だった。
「このことはです」
「必ずですね」
「弟さんにもです」
「伝えないといけないですね」
「いけないことでしょう」
「弟自身のことだからですね」
「はい」
その通りという返事だった。
「弟さんご自身も気付かれることです」
「何時かは」
「身体は確実に変わっていきますから」
「女の子にですね」
「そうなります」
「だからですね」
「何とかです」
優子のその目を見ての言葉だった。
「お願いします」
「それが私の義務ですね」
「そう申し上げると厳しいですが」
それでもと言った院長だった。
「確かにです」
「このことはですね」
「お願いします」
「わかりました」
「期日はないですが」
「決断はですね」
「されて下さい」
そこはというのだ。
「宜しくお願いします」
「はい」
答えはした、だが。
優子は自分でわかった、今の返事が普段の自分のそれと違うことに。随分と弱く力のない返事だった。そして。
その返事の後でだ、優子は院長に言った。
「私から弟に伝えます」
「そうされて下さい」
院長もくれぐれにという口調だった、そして。
院長は今度は優子自身にだ、こう言った。
「蓮見先生、飲み過ぎでは」
「おわかりですか」
「お顔に出ています」
見ればその目の下にクマが出来ている、そして肌も少し荒れた感じだ。彼女のその顔を見て言ったのである。
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