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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十話 俺と、私にできること 後編
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るこの時間もまた、温かい時間だと思った。

「そこを曲がると私のうち……」

 と言い切ったようなそうでないようなのタイミングで、雪鳴は立ち止まった。

 何事かと思い、雪鳴の視線の先に注目すると、一人の少女が立っていた。

「あ……」

 俺たちの横を、一台の車が通り抜ける。

 その車のヘッドライトは、視線の先にいる少女の色や姿、そして表情を明らかにした。

 そして同時に俺の心に、ふとした懐かしさを感じさせる。

「遅くなってごめん」

 俺の隣で謝る雪鳴に、少女は声を上げながら迫る。

「お姉ちゃん、今何時だと思ってるの!? ごめんで済ましていい時間じゃないよ!」

 お姉ちゃん。

 その呼び方、その声質。

 時間が経過して少し変わっているけど、根っこは変わらない。

 思い出すには、充分な要素だった。

「もしかして君……柚那(ゆずな)か!?」

「え……」

 目の前まで迫った所で、俺は彼女……逢沢(あいざわ) 柚那(ゆずな)に声をかけた。

 紺色のロングポニーに黄色の鋭い目。

 身長的にはフェイトと同じくらいの、雪鳴と同じ細身の女の子。

 そして雪鳴とどことなく似た雰囲気は、やっぱり姉妹なんだなって思う。

 五年前、雪鳴の隣にくっついていた、か弱い女の子がいた。

 あの頃はむしろ雪鳴が強気で、柚那が内気なタイプだったはずだけど、五年が経過すると真反対になるらしい。

 なんて感慨深さを抱いていると、柚那は俺を――――殺意の籠った目で睨みつけた。

「アンタは……」

「ゆず……な?」

「馴れ馴れしく、呼ぶなっ!!」

「っ!?」

 咆哮。

 口から放たれたそれは、なぜか俺の体を吹き飛ばすほどの力が込められており、油断していた俺は地面に引きずるような音を立てながら飛ばされる。

「ぐっ……!?」

「黒鐘!?」

「お姉ちゃんはこっち!」

 心配そうな表情で俺のもとへ向かおうとした雪鳴の右手首を、柚那が掴んで離さない。

 俺は仰向けの状態から立ち上がり、混乱した思考を落ち着かせるために聞く。

「柚那、なんの真似だ?」

「それはこっちのセリフだ!」

「っ!?」

 怒声と共に空間が僅かに揺れ、それが俺を吹き飛ばしたものだと思ったために横へ飛んだ。

 結果、その予想は正解だった。

 揺れは後ろにあった無人の自転車を遠くへ吹き飛ばしていったのだ。

 という事は、彼女は魔力を用いた攻撃をしてきてる。

 なぜ?

 その問いに、彼女は声に魔力を乗せながら答える。

「アンタはアタシを……何より、お姉ちゃんを悲しませた!」

「くっ!」


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