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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十話 それぞれの思惑(その1)
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をどう解決するか、その問題が残っている。

「それにしても今回、帝国は大胆な手段で危機を回避したと思いますが」
「元々帝国にはそれが可能なのだ」
「といいますと?」

ボルテックは物問いたげな表情だ。説明してやるか。しかし、これが判らぬようでは自治領主の地位は無理だな。或いは判らぬ振りをしているのか、それならば中々のものだ、楽しめるのだが。

専制君主制では皇帝、寵姫、側近など個人に権力が集中しやすい。そのため、今回のように皇帝が倒れると権力者達の基盤が崩れ、混乱が生じる。しかし同時に専制君主制の利点は大胆な人材の抜擢が可能だと言う事だ。今回の帝国はその抜擢によって混乱を回避した。そういう意味では専制君主制とは暴君などが出る危険性は有るが非常に弾力性に富んだ政治体制だと言える。専制国家が時折急激に国力を増強させる事が有るのはその所為だ。

一方民主共和制だがこちらは個人に権力が集中する事はない。そのため帝国で起きるような混乱が生じる事も暴君が出る事もないが、その反面専制君主制における大胆な人材の抜擢は民主共和制では期待出来ない。つまり安定性は有るがダイナミズムには欠けるのだ。

そのため民主共和制では余程のことが無い限り急激な国力の増強もないが、低下もない。ま、結局はそれぞれの政治制度を有効活用できる人材がいるかどうかだ。今回の帝国はその人材に恵まれた。そうでなければ大規模な内乱が発生していただろう……。

俺の説明を聞いたボルテックは納得した表情をしていた。ボルテック、頼むから俺を失望させるなよ。

「ところで、同盟軍のほうだがロボス司令長官の後任はどうなった?」
「はい。今現時点で三人の候補者が出ています。先ず、第一艦隊司令官クブルスリー中将、それから国防委員会情報部長ドーソン中将、最後に統合作戦本部長シトレ元帥です」

「? シトレ元帥? 」
「はい、異例では有りますが本人がそれを望んでいるようです」
「……」
「どうかしましたか?」
「同盟も侮れぬ、自ら第二線に立つ事を希望する人間がいるとはな。まして頂点にいるシトレ元帥が自ら格下の司令長官に就くか」

常識ならクブルスリー、非常時ならシトレということか。ドーソンは政治家どもの駒だな。誰を選ぶかで同盟の政治家たちの質がわかるということか。なかなか楽しませてくれるではないか……。

もし同盟の政治家達がドーソンを選ぶようだと同盟の先行きは危うい。帝国、同盟、フェザーンの勢力バランスが崩れる事も有るかもしれない。そろそろフェザーンは新たな道を探る必要が有るかもしれない。総大主教に話すのは……まだ早いだろう……。

「ボルテック、同盟に今回の帝国の騒動、それとヴァレンシュタイン少将、ミューゼル中将の情報を流しておけ、それから帝国にもロボスの後任人事の
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