4部分:第四章
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買った服を着てピンクハウスに向かう。やたらと少女趣味の服装になっているがそれが実に気持ちよかった。
「さて、と」
千佳は次第に見えてきた商店街のピンクハウスを見て呟く。
「ハンカチと。あとは」
何を買おうか考えていた。その時はあの服を買った人が誰なのかは考えてはいなかった。
「アクセサリーを見てね。そんなところね」
そんなことを考えていた。そうして丁度考え終わった辺りで店の前に来た。その時であった。
「有り難うございました」
「はい」
店から誰から出て来た。その人は。
「えっ!?」
千佳はその人を見て思わず息を呑んでしまったのだった。
「えっ!?」
向こうも気付いた。千佳の声で。
「どうして」
「それはこっちの台詞です」
千佳は唖然としたまま述べる。
「どうしてここに」
「そんなこと言われても」
そこにいたのは何と松浦先生であった。その長身にあの服を着ている。似合う似合わない以前にどうしてここにいるのかという謎すらあった。
「と、とにかく」
先生は苦し紛れの感じで言葉を出してきた。
「ここじゃ何だから。そうね」
「どうされるんですか?」
「場所を変えましょう」
こう提案してきた。
「お店の前でお話しても他の人やお店の迷惑になるわよね」
「え、ええ」
千佳も先生に言われてそれに気付いた。そういえばそうであった。
「ですね。それじゃあ」
「下手なところでお話しても」
それでまた他の誰かに見つかってしまうと考えたのだろうか。いつもはクール過ぎるまでにクールな先生の顔が今では狼狽しきったものになっていた。
「あれだから。そうね」
ここで裏手を見た。
「あっちに行きましょう」
「あっちですか」
「そう、あっち」
裏手を指し示して言う。
「そこに喫茶店があるのよ。そこでお話しましょう」
「わかりました。それじゃあ」
「ええ」
こうして二人は一先裏手の喫茶店に入ることになった。そこは千佳の知らない店だった。見れば大正のようなシックな趣きの店であり木造が目立つ。ダークブラウンの店によく似合うコーヒーの香りが支配していた。その中の木のテーブルに向かい合って座った。
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