第一章:大地を見渡すこと その弐
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仰を伝えることに満足したのであろう、矜持を持った賊はピクリとも動かない。これにて賊の荒々しくも充実した生は終わったのである。
仁ノ助は刀を振るい血脂を払うと、賊のこぼした言葉を考え始める。彼はちょうかくといった。これは地名というよりも、奴の主人の名ではないか?ちょうかく・・・。ひょっとしたらこれは・・・・・。
「・・っち・・・す!・・・・・・く!!」
彼の思考を遮るかのように目の前から人影が複数見えてきた。先頭を切るのはなぜか先ほどすれ違った女性だ。後ろを追う兵士よりもさらに早くこちらへ愛馬を駆っている。ここで仁ノ助はその答えを思いついた。彼らは自分の助けにきたのである。兵士よりも真っ先に駆けてくる彼女の気丈さに思わず苦笑いが口元に現れてしまった。もしかしたらまだ危険に晒されているのではと女性の表情が張り詰められていたが、目の前に広がった惨状に思わず口を開いたまま固まってしまった。彼女と擦違った者が、馬を駆った賊共を己の足だけで追いつき、あまつさえ殺戮したとしか考えられぬ情景だったのだから、固まるのは当然ともいえた。
呆然としたまま動かぬ彼女を追い抜いた兵士達も同様の表情を浮かべている。駆けつけるまでもまく賊共が殺されていたのだから、これもまた当然だ。
(さてと、どう説明するか。)
仁ノ助は苦笑いをそのままに、これからどう話していこうかと頭を悩ませて始めた。赤い光が天と地を染め上げている。それはあたかも、これからの彼らの行く末を物語っているかのようであった。
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