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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第一章:大地を見渡すこと その弐
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から聞きやがれ』。
 最後まで自らの勝利に向かって姿勢を崩さない賊に対し、純粋に武人としての敬意が内心に広がる。

(賊の中にも矜持を持つものがいたとは)

 仁ノ助はそれに応えるために刀を構えた。体の姿勢は男と同じ。体を右に開いて右足を後ろに引き、足を肩幅に開いた。異なるのは刀の構え。賊の片手上段構えと違って、仁ノ助のそれは両手を使った下段構えである。賊の刀が頭蓋に向かって振られる前に逆袈裟懸けにもって体を右下から左上に斬ろうとの魂胆である。 
 両者は息を徐々に落ち着かせ、互いにお互いの心が読まれないしていく。刀は一寸たりとも揺れず、姿勢は金剛神像の如く凛としたものとなっている。視線がぶつかり互いの眼に映る自分を見定める。戦意に満ちた空間は一種の隙を許さぬ緊張感を醸|(かも)し出している。油断をすれば相手の先手を許すことが手に取るようにわかる。その結果は己の死だという事も。
 空気が張り詰めいき、戦意と殺意が互いの間にて爆発しそうともなる瞬間、地を勢いよく滑る風が吹いた。

「「ッ!!!!」」

 両者は弾かれるように前へ飛び出す。握る刀はぶれず、ただ相手の心臓のみを食らわんと欲し輝く。仁ノ助は戦意を、賊は殺意を噴出しながら駆け寄った。空気が刃に切られる、距離が二間にもなり、刀の攻撃範囲に両者が飛び込んだ。神速の如く振るわれた刀が互いの胸の奥の臓器に向かって交差された。刀が振るわれた音が響き渡り、両者は一間半の距離を持って走りを止めた。数瞬をおいたがまだ倒れない、しかし地面には赤い血が垂れている。どちらかが斬られ、臓を食い破られたのは必至である。

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・ァァ」

 口から血と息を毀れだすのは、はたして賊のほうであった。仁ノ助持つ刀の刃からは血がべっとりと塗られている。二人分の血を吸った刀は太陽の光を受けて更に赤く光っている。賊の胸は狙い通りに逆袈裟懸けに深く斬られており、血が体を伝って地面にどろどろと流れ出している。賊の最後の一刀は惜しくも仁ノ助のそれよりも遅かったのだ。だがそれでも鋭さを保っていたらしく、仁ノ助の肩口を浅く切りつけていた。
 賊はゆっくりと膝をつき、刀を持つ力が無くなったかカランと音を立てて刀が地に転がった。上半身はそれでも地面に倒さないことに、賊の最期の意地が見せられている。
 仁ノ助はゆっくりと問う。

「・・・・・・・・・答えは?」
「・・・・・・・・・ちょう・・・・・か・・・く・・・・・・・・・さま・・・・・・・・・・」

 男は僅かに血を漏らして言葉をこぼし、俯|いた。正座をするかのように足が畳まれている、しかし地には頭を下げたが体は倒していない。男の表情はよつれた髪によって窺い知る事ができないが、口元は僅かに緩められている。己の武威と信
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