第六章
[8]前話
韓信は謀反をしようと考えた、だがそれは既にだった。
彼は長安にいて目付がついていてだ、呂后に知らせてだった。
呂后はすぐにだ、宮廷の者達に言った。
「この時が来ました」
「はい、あの方をですね」
「ここで、ですね」
「殺しますか」
「こうするつもりでした」
呂后はというのだ。
「ですから」
「それでは」
「はい、ここはですな」
「すぐに韓信殿を捕らえ」
「そのうえで」
「そうします」
周りの者達も応えてだった、そして。
韓信に策を仕掛けた、彼が信頼している相国である蕭何の名で彼を宮廷に呼んだ、普通二そうしたのではなく。
彼が関わっている叛乱が鎮圧されたと天下に知らせて諸侯に祝賀の参内をする様に促した。それを蕭何の名でしたので。
韓信も参内したが、ここでだった。
捕らえれて宮廷の柱に縛られた、そしてこう言われた。
「ここで、です」
「貴方を処刑します」
「謀反のことはわかっています」
「お覚悟を」
こう告げられてだ、そしてだった。
彼は剣を向けられた、ここで彼もわかった。
「そういうことか、子房殿が言われた意味がわかったわ」
苦々しい顔で言ってだ、そうして。
その剣で斬られて死んだ、彼の親子兄弟即ち三族も皆殺しにされてだった。
次に彭越、英布も三族共々殺された。その話を隠棲先で聞いてだった、張良は嘆いて言った。
「あまりにも功を挙げると」
「それによってですか」
「身を滅ぼす」
こう話を伝えた者に言うのだった。
「劉邦様に警戒されて」
「功績が大きいとですか」
「そう、王の位に広い領土」
その二つによってというのだ。
「かえって劉邦様に力を警戒されてああなってしまうのだ」
「三族共々ですね」
「韓信殿達の様に」
こう言うのだった、そして文のことも言った。
「人は絶頂を迎えた時にはわからないものか」
「文のことですか」
「そうした時こそ身を慎むべきなのだが」
「韓信様はお気付きになられずに」
「ああなってしまった、残念なことだ」
史記には韓信は狡兎死して走狗煮られると言ったと伝えられている、あまりにも功績を挙げその褒美が大きく褒美をそのまま受けて権勢を大きくしたが故に彼も英布、彭越も討たれた。皮肉と言えばあまりにも皮肉な話である。
隠棲 完
2015・12・23
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