第五話 姉の苦悩その六
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「やっぱりな」
「そうだよ、絶対に」
「じゃあ何でそうなってるんだろうな」
「そこがわからないね」
「本当にな」
「とにかく姉さんには」
優花はあらためて言った。
「そろそろね」
「酒をだな」
「止めて欲しいね」
「それだけ飲むことはだな」
「うん、止めて欲しいよ」
心からの言葉だった。
「さもないと身体に悪いから」
「ウイスキーとかバーボンを一日二本か」
「多過ぎるね」
「ああ、どう考えてもな」
「僕もそう思うからね」
「酒は飲み過ぎるとだからな」
「確実に身体に悪いし」
「そろそろ止めないと駄目だな」
龍馬はこのことは強い声で言った。
「御前も優子さんに言ってるよな」
「毎日ね」
「それでもか」
「ずっと飲んでるよ」
ここ暫くはというのだ。
「本当にこのままだとね」
「身体を壊してな」
「いいことはないから」
「その通りだな、本当に何があったんだろうな」
「そこが気になるよね」
「どうにもな」
こうしたことを話していた、優花だけでなく龍馬も優子のことが気になっていた。なぜそこまで飲む様になっているのか。
その優子はこの日院長に院長室に呼ばれてだった、優花のことについて尋ねられていた。
「それでなのですが」
「はい、弟のことですね」
「弟さんにはお話されていますか」
「いえ」
自分の席に座っている院長の前に立ってだ、優子は首を横に振って答えた。
「までです」
「そうですか」
「言おうと思っても」
それでもとだ、優子は正直に話した。
「とても」
「そうですね、事情が事情ですから」
「はい、本当に」
「こうしたことは確かに例がありますが」
過去にとだ、院長も言った。
「ですが私も実際にこの目で見たことははじめてです」
「私もです、そして」
「それが実の弟さんのことですと」
「とてもです」
難しい顔になってだ、優子は答えた。
「言えるどころか受け入れることも」
「出来ませんか」
「苦しいです」
これもまた素直な言葉だった。
「どうしたらいいのかわかりません」
「伝えるべきかですね」
「はい、しかしこうしていても」
自分が苦しく悩んでいるその中でもというのだ。
「弟の身体は」
「変わっていきます」
院長はあえてだ、この現実を隠さずに優子に告げた。
「少しずつでもです」
「女の子になっていきますね」
「そうです、確実に」
「そうですね、有り得ない筈のことが」
「この世は絶対ということはありません」
この現実もだ、院長は言った。
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