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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第八話 指切りの約束と、四月の空模様
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お母さんもお父さんも、小伊坂くんが送ってくれてるの話したら許してくれたから!」

 私は小伊坂くんにおウチまで送ってもらいながら、他愛もない話しをしていた。

 ……ううん、本当は他愛もない話しすらまともにできてない。

 彼が出した話題に、私が返してるだけ。

 そして話題がなくなれば、慣れない沈黙が漂う。

 そんな状況を、昨日の帰りと同じように繰り返してる。

(なんか、うまくいかないな……)

 自慢じゃないけど、私は誰とでもある程度は会話ができると思う。

 実家が喫茶店で、接客の手伝いもしてたから、会話って得意だと思ってた。

 だけど実際、蓋を開けてみればこんな状態だった。

 彼の顔をまともに見れずに俯いて、話題も振ってあげられなくて。

 そして何より、彼のことをまだ苗字で呼んでいるってことが、何よりも距離を作っている気がする。
 
 どうして、こんなにも遠慮してしまうんだろう。

 なんでもっと、いつも通りでいられないんだろう。

「あの……」

「ん、どうした?」

「逢沢さん、置いてきて良かったんですか?」

 唯一でたのが、どこか事務的な質問。

 私を送る変わりに、逢沢さんは小伊坂くんの自宅で待機してる。
 
 そのことを聞けるのが、今の私の限界だった。

「金髪の少女のことがあるからな。 俺らが目を離してる隙に目覚めて逃げられたら意味がないし、監視の意味でも待機してもらってる」

「大丈夫なんですか?」

 私は逢沢さんのことを、何一つ知らない。

 魔導師だってことは、小伊坂くんを見ればなんとなく分かるけど、どれだけ強いのかも分からない。

 そんな私に、小伊坂くんは自信のある笑みを浮かべながら答えた。

「五年が経って、雪鳴はかなり強くなってるみたいだ。 それは服越しにでも分かるくらいにね」

 だから大丈夫、って小伊坂くんは即答した。

「そ、そうなんだ……」

 どうしてだろう。

 チクリと、私の胸に小さな痛みが生じた。

 一瞬だけ。

 注射をされた瞬間みたいな、一瞬の痛み。

 だけど忘れられない、はっきりとした強い痛み。

 胸に手を当てて確かめる頃には消えていて、違和感だけが残った。

(なんだろう、今の……)

 彼が。

 小伊坂さんが、逢沢さんのことを話す様子が楽しそうで、嬉しそうで、自慢気で。

 それは私のお父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃんが互いを自慢しあう時みたいな、家族に対するような暖かい姿。

 なのに、その姿を直視できなくなって、私はまた俯いてしまった。

 どうしてか、見たくないって思った。

(どうして……なんだろう)

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