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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第226話 森の家
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 あの森の家までの、障害はもう無い。……何も、無い。

『いっちばーんっ!』

 まず、22層の地に足をつけたのは、シリカだった。駆け足で、勢いよくジャンプして。
 シリカに続き、次々と22層に足を踏み入れる。足を踏み入れた事が、到達感をよりいっそう実感させてくれた様で、其々が『22層到達だ!』と 手を上げた。

 SAO経験者であれば、懐かしささえ覚えるだろう。そしてそのメンバーが多いパーティだ。この層は、森しかない層で、攻略も全く苦じゃなかった事から、覚えている事自体、少ない者が殆どだろう。

 約5名を除いて……

「………………」
「………………」

 黄金色に染まる空の下で、湖畔を眺め続けている2人がそこにはいた。
 怒涛の勢いで 戦場を駆け抜けたバーサクの姿ではなかった。その背を見ていたのは リズだ。

 リズの目には、2人の事が……まるで 迷子の子供が 漸く……漸く、家を見つけて、帰る事が出来た。そんな風に想えてならなかった。2人は大切な友達、親友であると同時に、よく想う、まるで妹の様な気持ち。保護者的な感情が大いに刺激される。
 だから、軽くため息を吐くと、2人に向かって言った。

『アスナーっ、レイーっ。行っておいで。この層の転移門の有効化(アクティベート)は、あたし達がやっとくからさ』

 リズの言葉を訊いて、アスナもレイナも はっとして、改めて皆を見た。
 皆、其々が頷いてくれた。 そして、キリトの背をリズが。リュウキの背をシノンが、思い切り押す。笑顔で、見送りをしてくれている。

『『うんっ!』』

 その笑顔に答える様に、赤く染まる夕日を背に、其々の想い人の手をとって、翅を広げた。勿論、アスナの肩にはユイがいた。

 ユイにとっては、4人とも皆、大切な家族。でも、今回はキリトとアスナの家に、との事だった。それは、レイナもリュウキも事前にそう言ったのだ。
 2人はアスナとキリトの家で、ユイと出会った。……だから、家に帰るのであれば、間違いなくユイの家は そこだから。『会いにいくよ』とリュウキから。そして レイナからも言われて、ユイは 目に涙を貯めて喜んだのだった。

 4人は、この22層の空を飛ぶ。

 空から見た22層は初めてなのだが、違う視点からでも、ひとつひとつの風景が、思い出せる。
 釣り大会をした湖の畔。一緒に湖を一周した時に見つけた違った種類の並木。森林が広がっているのだが、その中の林道を辿っていくと、やがて見えてくる少し開けた草原。

 ひとつひとつが目に入って、その度に彼の手を握る。もう、涙を流しそうになってしまっているが、まだ 堪えた。

――……あの家(・・・)に、たどり着くまで、取っておこう。

 そう思った。……2人とも
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