狐珀アマルティア
強欲の目覚め
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日、テレビの見過ぎでふらふらしていた足取りは、そんな車の増えた道へ、踏み出してしまった。
「キツネ!」
十香の制止も彼の脳には入らなかった。
「・・・あ・・・死んだ」
ぼそっと、呟いた。
ふらっと横を向いた時、目の前、避ける事の不可能な程目の前に、大きく、低いブザーを鳴らした車が・・・大型トラックが目の前にあった。
「死んだ?死ぬ?死んで?死亡?死んだ・・・死ぬ?嫌だな・・・まだ死ぬのはやだな・・・じゃぁどうする?・・・あ、そうだ。死ぬ前に・・・殺せばいいんだ」
頭の中でそう思った。
実行不可能なんて問題じゃない。死ぬのを避ける為だけに運転手を殺す?避けることでも不可能に近い状態、殺すなんてことも出来ない。
「・・・殺す・・・殺す・・・殺す?・・・・・・あぁ・・・・・・うん。そうだ・・・殺せばいい・・・あいつみたいに、あの低能どもみたいに、クズみたいに・・・だったらこうすればいい・・・・・」
――――強欲怪物――――
単調で静かな声が、口から発せられたかもわからない本当に静かな声が、その場にいた人間の中で唯一、十香にだけ、聞こえた。
そして、偶然にもフラクシナスにいた士道と琴里にも・・・聞こえてしまった。
すると、彼が瞳をカッと見開く。しかし、いつものような金色の瞳では無く、それはまるで血みたいに真っ赤に染まっていた。
かと思えば、何かが狐珀をミサイルと化した大型トラックから守った。盾のようなものであろうそれは、衝突によって生まれた煙によりシルエットも確認が出来ない。
すると、巨大な爆発音と共にトラックの運転席部分が盛大に爆発した。映画みたいに火薬でも入れたんじゃないかと思うくらいの爆発と同時に破片が周り一帯に散らばり始める。
黒い煙が空へ昇り、戦争の始まりの狼煙となり、絶望の柱にも見え、周りにいた人間達は一心不乱にその場から逃げた。十香を除いて・・・
狐珀の周りに出来た煙が次第に空気と同化していく時、その盾のシルエットが見えた。二つの・・・少なくとも盾とはかけ離れていた。
そしてついに、消えた時、その姿が見えた。手首から肘の中間辺りまでしかないとてもごつい両腕。消えている部分は蛇がうねるみたいにぐにゃぐにゃと動いている。真っ黒い腕には紋様のようなものと、手の甲部分に見開いた目にも見える白い線がある。
「お前だ・・・お前が殺した・・・喰らわせろ!対価だ!」
狐珀の口から、今までに聞いたことのない怒号が発せられる。
脳でそれを分かった直後、あの爆発から逃げていた世界の終わりを見たような恐怖の顔をした運転手を捉えると、ニタァと笑いもう一つ彼の目の前に現れた腕が運転手をぎりっと握る。
ボキッと周りに聞こえる程、骨が折れた音が聞こえたと思うと、彼の恐怖に満ちた顔に悲痛が追加される。
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