理と欲と望みと
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る。この世界にその魂が留まっていることこそが奇跡なんだ」
すっと秋斗の目が細まった。
華佗が何故、詠を除いて二人きりを望んだのか……その理由が語られる。
一度死んだ人間が甦り、あまつさえ別の世界の住人となっているなど通常は有り得ない事だ。しかも常人とはかけ離れた武力まで手に入れている。
間違いなくあの腹黒がナニカシタのだろうと至り、内心で自嘲の笑みを零した。
「……へぇ」
「気分を害したなら謝る。だが……俺は医者だ。患者の身体状況を正しく診る必要がある。だから偽りなく答えて欲しい。あんたは……本当に人間か?」
真剣な目で答えを待つ華佗から視線は外さない。痛いほどの沈黙が場を包んだ。
話していいかどうか。今まで誰一人として自分の存在の真実を明かしたことなど無い。世界全てを騙すペテン師として、ずっと黙ってきたのだから。
やがて諦めたように、秋斗は首を左右に振った。
「そうさな……人かどうかなんざ俺には分からん。答える事が出来る質問には答えよう。俺の魂がどうしてこの世界に留まっていられるかの疑問にも……絶対に他言しないってんなら話そうか」
天秤が傾いたのは、やはり記憶の復元に対して。
この短い時間で華佗の人となりは少し分かった。心の芯まで医者らしい彼ならば、きっと患者の個人的な情報をどこにもばらさないと思えた。
「約束しよう。誰にも口外しない。患者の秘密は守るのが医者だからな」
ゴクリと生唾を飲み込んだ華佗に微笑んで、彼はゆっくりと口を開く。
「世迷い言と思うかもしれない。妄想だと笑われても仕方ない。有り得ないと一笑に伏してくれても構わん。俺も自分に起きていることを全部理解してるわけじゃない。だが……お前さんに全てを委ねるよ、華佗」
遥か昔の出来事のような白の世界を思い出す。
少女の見た目なのに抗えない存在が思い出される。
ずっとずっと誰にも明かせなかった秘密を、遂に彼は語り始めた。
「まず初めに……俺はこの世界の人間じゃないんだ。そして既に一回死んだことがある」
†
白の世界の中心で一人の少女がモニターを見やる。思惑から外れた邂逅に舌打ちが一つ鳴り響く。
輝く鍼を受け入れる秋斗と、必死の表情で施術に取り込む華佗が其処には映し出されていた。
「道術は世界側の理。さすがに私の頸を取り除くことは出来ませんけど……存在定着率の低下は避けられない」
カタカタとキーボードを鳴らして打ち込む文字の列。しかしやはり、彼への介入は不可能だった。
小さくため息が漏れ出る。頭を抱えたくなるも、どうにか項垂れるだけで我慢出来た。
「……最悪の場合、巻き戻された記
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