猫飼ってるだろ? 〜小さいおじさんシリーズ3
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「猫、飼ってますよね」
黒フチ眼鏡の青年が、おずおずと俺の四畳半の薄暗がりを覗き込んで云った。
「……いや?なんで?」
何で疑われているのかなんて、よく分かっている。彼の視線の先には、最近止むを得ず購入した『猫ちぐら』がある。彼は、違反住民(仮)に多少びびりつつも、問い質そうとする。大家がいずれ大家業を継ぐ息子に度胸をつけさせるために、偶にこういうことをさせているらしいのだ。まだ高校生くらいだろうに。
「その籠っぽいの、知ってますよ。猫の家でしょ」
「あー…これはその…ある人へのプレゼント、というか」
間違ってはいない。
あれを『人』と言い切ってしまって良いのかどうかは疑わしいのだが。
3ヵ月ほど前から、俺の部屋には基本的に3人の『小さいおじさん達』が出現するようになった。
偶にゲスト的に、4人目が出現することがあるのだが、それ以上に増えたことはないし、レギュラー化することもない。いつも出てくるのは俺が『豪勢』『端正』『白頭巾』と一方的に名付けた3人のみだ。
12月に入り、肌寒くなってきた頃、奴らがこっちをちらちら見ながら
「しかし何だ、ここはとても冷えるものだな。余は足の先が冷たくなってきた」
「エアコンの暖かさというのは、意外と床まで届かないものなのです」
「おお、寒いな。この冷気、体の小さいものには命取りになるやもしれぬ」
などと脅迫まがいなことを呟くので、保温性の高そうな猫ちぐらと猫用ふかふかマットを購入した。ちぐらの中には配線を施し、電気もつくようになっている。奴らは俺のハンカチで入り口に勝手にカーテンまで作ってご満悦だ。
「そ、それだけじゃない!このあいだ親父が集金に来たとき、畳に猫が引っかいたような瑕がついてましたよね!?」
「えーと、あれは知人が暴れて…」
知人というのも嘘ではない。泣く子も黙る関帝様が白頭巾に『ルマンド切れ』と命令されて、ブチ切れて暴れた跡だ。
「この前、家の前を通りかかったら、おっさんの雄叫びっぽいのが聞こえましたよ!?」
「それは…おっさんじゃないかな」
張飛という名の酒乱のおっさんじゃないかな。
「じゃあ、そこの3つの小鉢に取り分けてあるラーメンみたいなのは!?」
「あ」
…奴らが『今日のように冷える日は、温かい麺などが恋しくなりますな』とか、こっちをちらちら見ながら云うので仕方なく取り分けてやったインスタントラーメンが、少し残っていた。おかげで最近、ラーメン一袋では足りない。
「……実は俺はラーメンソムリエで、茹で加減の研究をしているのだ。今のところ、俺的には2分がベスト」
「あぁ分かる分かる、丸ちゃん正麺は3分は茹で過ぎですよね。…じゃなくて!」
不完全なノリ突っ込みみたいな事をした後、大家の息子はちらりと部屋の中に視線を走らせた。
「3匹?3
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