第四話 変化の兆しその八
[8]前話 [2]次話
「女性になります」
「身体がですね」
「そうなります」
その通りという返事だった。
「これからは」
「そうですね、では」
「このことは決してです」
今度はレントゲン科の主任が優子に言って来た。
「他言無用です」
「若しこのことが世に広まれば」
「マスコミはこうした話には飛びつきますね」
「間違いなく」
優子は主任にも答えた。
「そうなります」
「そうです、我が国のマスコミは無法そのものです」
「ワイドショーやタブロイド紙の格好の餌食ですね」
「そうなります」
だからこそというのだ。
「ですから」
「決してですね」
「弟さんの為です」
主任は真剣な顔で優子に告げた。
「全ては」
「そうですね、本当に」
優子も真剣な顔で応えた。
「弟を守る為に」
「これからのことですが」
また院長が言って来た。
「まだ考えていませんが」
「それでもですね」
「対策は考えていきます」
優花をどうしていくかということはというのだ。
「それも早急に」
「そうして頂けますか」
「はい」
確かな声でだ、院長は優子に答えた。
「ですからご安心下さい」
「弟は大丈夫ですね」
「命や健康に関係はありませんし」
それもないからというのだ。
「くれぐれもです」
「だからこそですね」
「このことは余計にです」
それこそという口調での言葉だった。
「外部には漏れない様、そして」
「弟には、ですか」
「お話されますか?」
保護者である優子に問うた言葉だった。
「このことは」
「どうするべきか」
考える顔、それも強張った顔でだった。優子は院長に言葉を返した。
「まだ何も」
「お話があってすぐだからですか」
「はい」
本当にという返事だった。
「そう言われましても」
「そうですね、どうしても」
「まさか、あの子が」
優花のその顔が浮かんだ、それでだった。
何とか現実の中に己を保とうと必死に努力しつつだ、院長に言った。
「そう思いまして」
「だからですね」
「少し時間を下さい」
これが今優子が言う最大限の言葉だった。
「今は」
「そうですか、今はですね」
「必ず返事をします」
このことを約束したのだった。
「このことは」
「そうですか」
「それまで待って頂けますか」
「それでは」
「ただ、弟は」
また優花に顔を脳裏に浮かべた、あどけない優しいその笑顔を。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ