第5部 トリスタニアの休日
最終章 剣と私怨
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りがとうございます、アニエス。あなたはほんとに、よくしてくださいました」
とここで、ウルキオラが口を開いた。
「こいつがアニエスか?」
ウルキオラから突然名を呼ばれたアニエスは困惑した。
「ええ、そうですわ。ウルキオラさんに援護をお願いしたいというのは」
アンリエッタの言葉にさらに困惑した。
「陛下、一体何のお話でしょうか?」
「ごめんなさい。あなたにもしものことがあったらと思い、ウルキオラさんに援護をお願いしましたの」
「本意ではないがな」
ウルキオラがアンリエッタに続いて言葉を発する。
「援護…ですか?」
そんな会話をしていると、また劇場に観客が入ってきた。
マンティコア隊を中核とする、魔法衛士隊であった。
獅子の頭に蛇の尾を持つ幻獣にまたがった苦労性の隊長は、その場にいた全員を見つめて目を丸くした。
「おや!これはどうしたことだアニエス殿!貴殿の報告により飛んで参ってみれば、陛下までおられるではないか!」
慌てた調子で隊長はマンティコアから降りると、アンリエッタのもとへと駆け寄った。
「陛下!心配しましたぞ!どこにおられたのですか!我ら一晩中、捜索しておりましたぞ!」
泣かんばかりの勢いで、人のいい隊長は声を張り上げた。
とうとう魔法衛士隊まで勢ぞろいなので、なにごと?と見物人が集まってくる。
騒ぎになりそうなので、アンリエッタはローブのフードを深くかぶった。
「心配をかけて申し訳ありません。説明は後で致しますわ。それより隊長殿命令です」
「なんなりと」
「貴下の隊で、このタニアリージュ・ロワイヤル座を包囲してください。蟻一匹、外に出してはなりませぬ」
隊長は怪訝な顔をしたが、すぐに頭を下げた。
「御意」
「それでは、私は参ります。ウルキオラさんはアニエスと共にお願いします」
「私は姫様にお供しますわ」
ルイズが叫んだ。
しかし、アンリエッタは首を振る。
「いえ、あなたはここでお待ちなさい。これは私が決着をつけねばならぬこと」
「しかし」
「これは命令です」
毅然と言われ、ルイズはしぶしぶ頭を下げる。
アンリエッタはたった一人、劇場へと消える。
「お前はここで待っていろ。直に終わる」
ウルキオラが発すると、アニエスとともにどこかへ向かっていった。
そして……、後にはルイズのみが残された。
ルイズは邪険な表情を浮かべた。
「いったい、何がどうなってるのよ」
ウルキオラはアニエスとともにタニアリージュ・ロワイヤル座のわき道を歩いている。
しばらくして、アニエスが足を止めたので、ウルキオラも後に続いた。
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