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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十四話 撤退命令
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イン少将を残したのはせめてもの救いだ。軍務尚書は彼に帝都防衛の全権を与え我らの帰りを待とうというのだろう」
「一ヵ月半はあります。持ちましょうか」

「あの男なら何とかするだろう。いやしてもらわなければ困る。卿も他人事ではないぞ」
「は? 小官もですか」
「わかっておらぬか。陛下がどこで御重態になられたと思う」
「……まさか」
「そうだ、グリューネワルト伯爵夫人のところだ、おそらくはな」
「……」

「恐れ多いことでは有るが、万一の場合、卿を敵視するものどもが何を考えるか、もう判るであろう」
「姉が陛下を害し奉ったと」
「うむ。卿を敵視する者たちにとって今回は千載一遇の機会なのだ。ミューゼル中将、これからの卿にとっての戦いは戦場だけではない。今オーディンで行なわれているような戦争も卿は行なわなければならん」

貴族を相手に陰謀、謀略か。俺に出来るだろうか、参謀が欲しい。俺を助けてくれる有能な参謀が。
「シュターデンには気をつけよ」
「は? シュターデン少将ですか」
「あれはブラウンシュバイク公に近い。私に何度かブラウンシュバイク公に付くように誘い掛けてきた」

「お付きになるのですか」
「馬鹿な、私の仕事は外敵を討ち、陛下の宸襟を安んじ奉らん事だ」
「はっ。失礼をしました」
「ミューゼル中将、焦るな。一つ一つ片付けるのだ。先ずは殿をしっかり務めよ。この遠征軍が敗北すれば、それだけでオーディンは内乱に突入しかねん」
「はっ」

ミュッケンベルガーのいうとおりだ。先ずは殿を務める事に専念しよう。オーディンの事はその後だ。ケスラーは元々憲兵隊にいた男だ。頼りになるだろう。それとヴァレンシュタイン、今はあの男を信じるしかない…。






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